東京アプレイザル・不動産鑑定士の永井宏治です。

今回は少し実務とは離れますが、時事的なお話として「帝国ホテル建替え延期」のニュースについて書いてみます。

先月、日比谷にある帝国ホテル建替えが延期になるというニュースを見ました。建築費やエネルギー関連費の高騰から事業の見通しができなくなり、建替え計画が未定となったようです。

私は帝国ホテルについては宿泊したことはありませんが、ラウンジやお招きいただいたパーティー等で利用していました。

もともと、二代目帝国ホテルを設計した建築家のフランク・ロイド・ライトが好きで、国内のライト建築(愛知県犬山市・明治村の二代目帝国ホテル、池袋の自由学園明日館、弟子の田上義也が作った旧小熊邸等)もかなり見てきました。現在の帝国ホテルにも至る所でライトのデザインが施されていることがわかりますし、エントランスから入った奥の方には二代目帝国ホテルで多く使用された大谷石のレリーフもあります。

上記明治村の二代目帝国ホテルは、当時の玄関部分のみ移築されていますが、玄関部分だけでもその中は大変豪華で、大谷石やステンドグラスに幾何学模様の細工が施され、当時の世界的な流行であったアールデコの影響も感じられます。

ライトは予算の何倍もの費用をかけたことで、二代目帝国ホテル完成前に解雇され、弟子の遠藤新にその後の完成を託してアメリカに戻りました。竣工の日(1923年9月1日)に関東大震災が発生しましたが、ライト館は無事でした。ライトは地震が多い日本の特性を考慮した上で設計したと言われています。また、関東大震災の際、建物が無事だったことで被災者を受け入れたと言われており、その歴史が2011年の東日本大震災時の帰宅困難者受け入れにもつながったと言われています。

現在の三代目帝国ホテルに建替えられる際、ライト館の建替え反対運動が起き、建替えのための取壊し反対運動が起きたのもこの帝国ホテルが最初だったと言われています。

このような歴史がある帝国ホテルですが、現在の建替えに話を戻しまして、元々は2036年に建替えが完成予定だったようです。この計画も今から10年後なので相当先でしたが、未定となってしまったことで本当に建替えが行われるのか、実現性としては相当低くなってしまいました。

私は建替えのニュースを最初に聞いたとき、「ライト館のようなデザインの外観で建替えられたら良いのになぁ」と感じていました(現行建物の外観は普通なので)。プレスリリースではとても瀟洒な建物で、外観にも幾何学模様が施され、建築家の方もライトのDNAを引き継ぐようなコンセプトでイメージを作成されたのだと思います。

昨今の建築費やエネルギー関連費の高騰により帝国ホテル建替えが未定となってしまったことは個人的には大変残念に思います。ただ、いつの日か令和の時代にライトのDNAを受け継ぐ新しい帝国ホテルを見てみたいと思います。

【明治村の帝国ホテルライト館(筆者撮影)】