東京アプレイザル・不動産鑑定士の永井宏治です。

今回は【不動産評価は「更地に始まり更地に終わる」?】について書いてみます。

いきなりで恐縮ですが、私は普段仕事でスーツを着るのが好きなのですが、スーツには「紺に始まり紺に終わる」という言葉があります。一番オーソドックスな紺(ネイビー)のスーツから着始めて、様々なスーツを着ても最終的には紺のスーツに行きつく、という意味でしょう。私自身も長年スーツを着用してきて最近はやはりスーツは紺、さらに無地が一番なのかな、と考えたりしています。

話を戻しまして、題名の言葉は私が最近考えている言葉です。不動産鑑定士の業界では最初に「住宅地域内の更地の評価」を実務として勉強することになります(実務修習の題材として)。そして、自用の建物及びその敷地、収益物件等の貸家及びその敷地、マンション(区分所有建物及びその敷地)、借地権、底地(貸宅地)、賃料(地代、家賃)、オペレーショナルアセット等の様々な類型を経験していくことになります。それぞれにおいて論点が異なり、難しい部分もあるのですが、私としては最終的には更地(建物が存しないものとする「更地として」も含む)に行きつくのではないか、と考えます。

更地と一言で言っても「一般住宅の敷地」ばかりではありません。商業地もあれば工業地もあります。それらは住宅地よりも取引事例の価格もバラつきが多く、取引事例比較法も住宅地よりは難易度が上がります(よく地価公示の鑑定評価書では「中心価格帯の把握は困難」というような文言も使われています)。

しかし、私としては「住宅地」が商業地や工業地よりも難易度が高いと感じます。商業地や工業地の更地は基本的には形状が標準的なものが多く、がけ地や無道路地はほぼありません。

住宅地には大規模画地、がけ地、無道路地、建築確認不可物件等、相続税申告で取り扱うこととなるこれらの土地も基本的には「更地」です。そこに税務上の「評価単位」の考え方が加わることで、筆ごとではなく「現況利用を前提とする対象不動産の確定」を行う必要があることで難易度は飛躍的に上がります。

全体は縄伸びをしているのか。縄伸びをしているとしてもどの程度なのか。申告までの時間、依頼者の資金等も考慮した上で測量を行うべきなのか。収集可能な資料から評価単位面積をCADで査定することができるのか。宅地と市街地山林の境目はどこになるのか。高低差がある場合、鑑定評価を適用するとしたら宅地造成費はいくらくらいになるのか。誰も買わないような土地の最有効使用は一体何になるのか。そのようなことを多々考えると「不動産の評価は更地で始まり更地に終わるのではないか」とも思えます。

今現在でも、私は「住宅地域内の更地の評価」で頭を悩ませています。不動産は二つとして同じものはない、というのはよく言われることですが、難易度の高い不動産の評価は本当にしんどいと思うことも多いです。しかし、そのような不動産に出会うと心のどこかで「評価させていただいている」という心境にもなります。なかなか言語化するのが難しいのですが、地主さんから税理士さんにお話があり、弊社にご相談及びご依頼をいただいた上で現場に来ている。そのような信頼関係に基づいた経緯を経て私がその不動産を見させていただいている、評価という仕事をさせていただいている。そのように考えると複雑な不動産の状況であったとしても何とか知識や経験を総動員して適切な評価を行おう、という気持ちになれます。資格に胡坐をかかず、今後も真摯に依頼者や不動産に向き合っていきたいと思います。