【マンション評価改正による財産評価と時価評価の逆転事例】
今回の(令和6年1月1日以降の相続より)区分所有権建物(マンション)評価の改正は基本的には改正前の評価方法があまりにも実態を反映していない(ほとんどが時価を大幅に下回る)ため課税の公平性の観点より時価の60%程度の評価額に引き上げようとするものです。これは、むべなるかなと言わざるを得ません。
しかし、路線価が高い都心部に所在する築古の区分所有マンションはこの新通達をもってしても時価を相当上回ることになり、納税者は注意しなくてはなりません。つまり通達評価額では売れないということです。二つの事例を見てみます。
都心〇〇区の路線価が高い地域に存する老朽化したマンション 地上階数11階
土 地 面 積 3,500 ㎡
正面路線価 15,600,000円
築 年 数 58年
① 11階部分(専有面積56㎡)
売買成約価格77,000,000円 (坪単価約450万)
敷地全体の路線価評価 488億7250万円
※ 容積率500%のため地積規模の大きな土地に該当しない
以下は新通達方式の評価方法です。
土地部分の価格 (改正前と同じ) 200,297,273円
建物部分の価格 (推定額) 3,000,000円
土地建物通達評価額 (改正前と同じ) 203,297,273円 (264.0%)
② 3階部分(専有面積54㎡)
売買成約価格47,000,000円 (坪単価約564万)
以下は新通達方式の評価方法です。
土地部分の価格(改正前と同じ) 100,148,637円
建物部分の価格(推定額) 1,500,000円
土地建物通達評価額(改正前と同じ) 101,648,637円 (216.0%)
このように、実際の売買価格は①の物件は7,700万円、②の物件は4,700万円なので。
通達評価で申告すると過大な納税をすることになります。このような場合は鑑定評価により時価を証明することが重要です。
なお、このような逆転現象マンションは都心部における高路線価に面する居住用マンションに起きがちです。主要な街道(晴海通り、靖国通り、山手通り、国道1号線等)などは要注意です。
さらにいえば、通達評価で分割協議を行った場合はこれを取得した相続人は思わぬ損をすることにもなりかねません。
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