あけましておめでとうございます。本年度も引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

【 地積規模の大きな宅地制度の不可思議 その4】 

平成25年度の相続において東京都○○市に所在する山林の鑑定評価を依頼されました。というよりも、その当時は広大地に該当するかどうかの検討から始まります。

対象不動産の概要

面積 4,000㎡

都市計画法上の用途地域:第1種低層住居専用地域

建蔽率40%、容積率80%

最寄り駅からはバス便で約20分程度要する不便な立地です。

道路面より3m高い擁壁の上に存在する傾斜地状の山林(未利用地)

平均傾斜度は約15度

正面路線価 110,000円

仮にR5年相続の場合、地積規模の大きな宅地となり、その評価額は約1億3,480万円となります。

当社への依頼先は相続税申告業務を受託した税理士事務所です。まずは物件の基礎資料を預かります。公図・住宅地図・登記簿謄本・固定資産税評価証明書等を見た瞬間に、広大地に該当すると判断しました。広大地として判定する上での条件は全て満たしています。当社の意見書は不要なぐらい広大地に該当する土地です。広大地評価は単純に広大地補正率(路線価の40%)を当てはめるだけなので、約1億6,000万円になります。

実は、全く使っていない土地でしたので、相続人はこの土地を売却して納税資金に充てようと考えました。それで広大地並みの希望価格で売りに出しました。ところが、3か月経っても一向に買い手が現れません。それで心配になった税理士さんから問い合わせがきました。

「広大地評価では売れない」と弊社は判断しました。それは、買い手が建売業者しかいないと判断したからです。このような土地(山林)を購入する一般人はほとんどいません。建物を建てるための造成工事費用が莫大になるからです。しかし、建売業者はお手の物です。これを仕入れてエンドユーザー向けに宅地にするために造成工事を行います。この造成工事費用(対象不動産の造成工事費は約68,000円/㎡と査定)をかけないと売れません。

鑑定評価では、実際に売れる宅地は何㎡になるのか(有効宅地化率といいます)を算定します。それがいくらで売れるのか、そのための造成工事費用はいくら掛るのかを査定します。細かい経緯は省きますが、この土地の鑑定評価額を6,500万円と決定しました。広大地との差額は約9,500万円です。このことより、広大地による評価額は採用せずに鑑定評価で申告することにしました。

後日談ですが、この土地は申告からようやく半年後に7,000万円で売れたそうです。

鑑定評価額ズバリとは言いませんがほぼストライクに投げた鑑定評価です。

売り主も不動産鑑定士が付けた値段よりもチョイ高で売れたので納得してくれたそうです。

 

 

 

 

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