【 地積規模の大きな宅地制度の不可思議 その2】 

前回号の修正点があります。

【修正前】① 三大都市圏500㎡以上・その他都市圏1,000㎡以上の面積に限られること

【修正後】① 地積規模の大きな宅地の適用範囲が路線価図上の普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区に限定されたこと

 

結論からいうと大いに疑問が残ります。何故なら旧広大地時代においては、中小工場地区にもその適用が認められていたからです。この中小工場地区は、都市計画法の「準工業地域」か「工業地域」とほぼ軌を一にする地域区分でした。

しかし、準工業地域といってもその最有効使用は中小工場や倉庫だけではなく、建売業者により区画割り(細分化)されて戸建て建売用地になるケースがほとんどでした。よって、それらの取引事例を提示することにより、「広大地」としてほぼ認められました。

ところが、平成30年の通達改正で中小工場地区が除外されました。

国税庁は下記の理由を述べています。

※ 中小工場地区は、主として中小工場の工場用地として利用されることを前提とした地区であり、当該地区内の宅地は、中小規模の工場用地として利用されることが標準的であることから、「地積規模の大きな宅地」の適用対象とはならない(平成29年10月3日 資産評価企画官情報第5号、資産課税課情報第17号「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報))

 

これでは、中小工場地区は全て中小規模工場用地になるのだといっているに等しい論拠です。しかし、先にも述べたように、後継者がいない工場をそのまま引き続き工場として売却されるケースはかなり限定されます。だから、建売用地にして引き取られるのです。広大地の扱いとあまりにも整合性のない評価は見直して然るべきと考えます。

この問題点は下記の通り簡単に説明できます。

A地 正面路線価 175,000円 中小工場地区内 1000㎡ 

(地積規模適用外)

間口25m 奥行き40m 整形地 道路幅員6m

評価額 175,000円×1000㎡=175,000,000円

 

B地 正面路線価220,000円  普通商業・併用住宅地区 1000㎡ 

A地より道路幅員15mと広く自動車交通量が多い県道に面する

(地積規模適用あり)

間口25m 奥行き40m 整形地 

評価額 220,000円×奥行き補正0.97×規模格差0.78×1000㎡=159,585,000円

 

不動産鑑定士が普通に鑑定評価すると、正面路線価が高いB地がA地より高くなるのは当然といえます。

しかし、B地より明らかに環境条件に劣るA地が、中小工場地区というだけで高くなるのは全く持って論理が成立しないのです。

 

 

 

 

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