謹賀新年 本年もよろしくお願い申し上げます。 

国税庁の財産評価基本通達では私道の評価は正面路線価の30%と規定されています。

概略は下記の通りです。

「私道の用に供されている宅地の価額は(中略)100分の30に相当する価額によって評価する、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道は評価しない」

これの意図するところは、「通り抜け出来ない私道は30%評価せよ、通り抜け出来る私道はゼロ評価とする」ということです。しかしながら、通り抜け不可の私道といっても不特定多数の者が通行する私道は世の中に限りなくあるので、そもそもこの規定自体に不備があるといわざるを得ません。不特定多数の用語の解釈が極めて困難だからです。十人通れば特定なのか数十人通れば不特定なのかです。通り抜け不可でも賃貸マンションなどが密集していれば不特定多数になります。

なお、(当該道路が建築基準法の42条に該当すること)この規定は平成11年7月19日課評2-12により改正前通達の100分の60から引き下げられたものです。つまり、それ以前の相続において私道評価割合は何と60%だったのです。唖然・呆然とするばかりです。

さすがにこれではまずいと思ったのかは知る由もありませんが、それまでの正面路線価の掛け目60%評価を半分に引き下げて、平成11年度の相続から30%の評価で運用されています(ちなみに通達では更地評価額の70%減と表示されています)。この方が一般国民には受けが良いのでしょう。「おうそうか、当時は前年から半額にしてくれたから良しとするか」だったのでしょうか?ずいぶん割引いてくれたなと。

しかしちょっと待てと言いたいのです。

では、この30%の根拠は何でしょうか。私からいわせれば、ほとんど具体的な根拠あるいは科学的根拠はないといっても過言ではないのです。とりあえず半額にしておこう、といったところだったと疑います。しいていえば、国土交通省監修の土地価格比準表に記載されている私道の減価率を参考にしていることです。とはいえ、これも準公共的私道は80%引きにするなど、かなり不動産鑑定士にその判断を委ねる方法を採っています。行き止まり私道云々はありません。つまり、30%の文言はどこにもありません。国税不服審判所や東京地裁などはこの価格比準表を持ち出して「他の公的評価基準」に照らして特に問題ないといって逃げています。つまり、独自の見解や知見など持たないし、私道の価値を評価する経験則はありません。

じゃあ、お前はあるのかというと、相応の根拠を示すことは可能です。それは私道そのものの取引事例の実態です。私は多くの鑑定評価を手掛け、実際の取引事例をみて来ました。一言でいうと30%の売買事例は見たことがありません。ほとんどの取引に精通している不動産業者の方々もゼロ評価かあるいは数%程度というでしょう。尚、標準的画地価格の3~5%ぐらいの評価の取引事例を示すことが出来ます。それが実態なのです。

私が関わった平成20年11月相続時点の事件は東京高裁まで行き敗訴しました(平成27年7月8日判決)。それは、中野区の177㎡の位置指定道路そのものでした。通達評価が1,600万円、国税局側鑑定評価2,300万円、東京アプレイザル鑑定評価150万円。この私道(位置指定道路)は戦前から80年近く続いている道路であり、これが宅地化するなど99.99%ないのです(宅地化したらそれを使っている他の地権者が表に出られなくなるので無道路になるのであり得ないのです)。それを裁判所は宅地化の可能性を否定できない、などという始末です。はっきり言います。無知な人が裁判官をやっていると迷惑です。

でも安心してください。この裁判の後に当該地主さんの叔母さんの相続時に同じ私道評価をやりました。何と3%程度の鑑定評価が認められました。 どういうことか。(笑)

Let’s try 東京アプレイザル土地評価 実力判定テスト

Q13の答え  【誤り】

当該物件の所在地にもよるが、東京まで2時間要する場所で築30年、空室率25%の賃貸マンションの純収益利回りは10%以上といっても過言ではない。

 

 

 

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