今回は8月号でご紹介した【路線価評価方式の矛盾点】の続編です。
不動産等において、相続税の申告は国税庁が規定する評価方法で価額を出すということになっています。
本来は相続税法22条により「取得の時における時価」となっていますが、物件ごとの時価を一々把握することは手間と労力と費用面から見て不可能に近いので、国税庁が決めた通達なるもので(路線価評価)申告すれば、課税庁は是認することになります。つまり、一行政庁にすぎない国税庁の通達が法律の役割を果たしています。
しかし、毎年発表される路線価は公示価格の80%程度に抑えられているので、国民から見るといわゆる時価よりも低めの評価となるため納税者有利になっていることも事実です。
しかし、令和4年4月19日最高裁判決では、その判決文の中で一定の歯止めを打ち込んだようにも思えます。
下記の通りです。
評価通達は、「上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発出した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的根拠を有するというべき根拠は見当たらない、以下略」と明言されました。
つまり、国民は路線価方式により評価した価額が時価として矛盾するならば、不動産鑑定士等による鑑定評価により、適正な時価を出したうえで申告することも可能ということになります。ただし、今回の不動産はむしろ路線価評価よりも圧倒的に時価が高いことが証明された事案であり、課税庁側は通達評価を自己否定して鑑定評価に救いを求めたものです。
東京23区などの収益性の高い地域に所在する収益物件(1棟もの賃貸マンション等)は、路線価評価の矛盾(時価を反映していない)を、かなり以前より指摘されていました。
今回事件は相続税の申告前に当該物件を売却したことより、その評価額の差が露わになったものです。もし、黙って所有し続けていたら、こんなことに(路線価評価を認めない)ならなかったのでしょうか?
まさに後の祭りのような虚しさですが、それにしても、貸家建てつけ地 + 貸家建物に収益価格の概念を取り入れて来なかった国税庁の怠慢は、責められても仕方ないと思います。
不動産の評価は、単に相続税評価だけに留まらず、いわゆる民法上の評価(分割協議上の評価)にも影響が及ぶということを忘れてはならないからです。
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Q13
三大市圏以外に所在し、東京都心まで2時間を要する。土地面積は900㎡、建築後30年経過した鉄骨造3階建賃貸マンションがある。最寄駅から20分と遠く、慢性的には空室率は25%を超えていて、家賃も継続的に下落している。このマンションを第三者に売却することになったため、不動産鑑定士に依頼することになった。不動産鑑定士は鑑定に際して収益還元法を採用するとき、純収益の還元利回りを5%以下に設定するのが適正と判断した。
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