国税庁が規定する路線価の定義をおさらいしてみます。

評価通達14項には「路線価は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう)ごとに設定する」とあります。一般の住宅地では、これが通用するかも知れません。

しかし、幹線道路沿いにある高層マンション用地や繁華性の高い商業地(駅前商店街など)ではこの定義づけが、脆くも崩れることになるのです。

この2年ほどのコロナ禍においても、駅近や都心立地におけるマンション用地を大手分譲マンション業者がこぞって用地取得に血眼になっており、その落札価格は高騰を続けているのが現状です。

私が最近見知った取引事例を紹介します。

 

山手線〇〇駅 500m

道路幅員 25m(幹線道路沿い)

面積 約1,500㎡

 

この土地は路線価の約4倍で取引が成立しました。

この数年間においても路線価の4倍というのは驚くべき数字です。収益物件市場では、相続税対策と銘打って都心部の4~5億円程度の高級アパート、マンションの一棟売りが大流行しており、これらの価格を土地に換算すると、路線価の2~2.5倍程度で売れている事例が多くみられます。

しかし、更地で路線価の4倍というのは、私の経験上でもほとんどありません。リーマンショック、東日本大震災を経て以降、ここまで来たのかと嘆息するしかありません。

あるいは、路線価が低すぎるのかといわざるを得ません。

しかし、ちょっと待ってください。路線価と比べて何倍という考え方がふさわしいのかを考える必要性がないのか、路線価において標準的な土地とは何かを考えてみると、面白いことに気づきます。この幹線道路上の標準的宅地は何㎡ぐらいなのかということに行きつきます。

まさに私の本業である「不動産鑑定評価の考え方」になるのです。

その前に「路線価の親分は誰か」となると、これは地価公示ということになります。

地価公示は最有効使用を前提とした価格なので、土地の面積により対象不動産の最有効使用は異なるのです。

しかし路線価は土地面積が100㎡であろうが、2,000㎡であろうが同じ単価になっています。実は、これが大問題なのです。誰も疑問を抱かないし、気づいていないのです。

つまり、間口10m、奥行10mの100㎡の土地は、どう考えても分譲マンション用地にはなり得ません。しかし、間口40m、奥行50mの土地は完全なるマンション用地です。この2つの土地は全く持って違う土地なのであります。当然、分譲マンション用地はそのスケールメリットを享受し、最有効使用の観点から見て、路線価の4倍などという数字が付いてしまうのです。

しかし、100㎡の土地はどうでしょうか。裏の住宅地並みとはいわないものの、きわめて低い価格しか付かないことになります。つまりこの二つの土地を同一路線価に決めてしまうことに無理があるのです。

つまり100㎡の土地は収益性も少なく、スケールメリットは全くないので、2,000㎡の土地のような超過利得(面大増価という)も起こり得ないのです。

しかし、2000㎡の土地といえども、最有効使用を満たさない賃貸建物等が存在する場合は超過利得はありえず全く次元の違う評価になるのです。

 

 

 

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