土地所有者が自分の土地上にアパート、マンション等を建築する場合に、その建物(賃貸マンション)が最有効使用かどうかの判断が重要です。

基本的には一低専(50/100)の地域において、3階建賃貸マンションは最有効使用とは言い難い例がかなり見受けられます。では、何故土地所有者(地主)はこの空き家だらけの日本の賃貸市場を理解しているにも関わらず、賃貸マンションを建築するのでしょうか。これは土地代の初期投資(イニシアルコスト)が不要だからです。つまり、建物代に見合う利回り(リターン)があれば、とりあえず採算面での心配はありません。とは言え、本来は土地を拠出していることを考えれば、土地代もコストと考えなければなりません。この理屈を簡単に解説します。

所在地: 東京都練馬区(新築賃貸マンションを想定する)

用途地域: 一低専 (建ぺい率50%、容積率100%)

土地面積: 1,000㎡

路線価: 300,000円/㎡(駅800m)

土地のみの鑑定評価額(戸建て業者に売却すると仮定)2億7千万円(27万円/㎡)

建物面積: 1,000㎡(鉄骨造3F建て)

建築費: 2億3千万円で新築する

積算価格:(土地・建物の単純な合計額)5億円

収益価格の査定

年間賃料: 2,700万円

経費率: 20%(金利、減価償却除く)

純収益: 2,160万円

総合還元利回り: 6.5%(投資家からみると期待利回り)

収益価格: 2,160万円 ÷ 0.065= 3億3,000万円(土地、建物の合計額)

この結果、仮にこの賃貸マンションを売らざるを得ない状況になったとき、誰がこのマンションの買い手になるでしょうか。考えられる購入希望者はプロの投資家しかいません。投資家は目先の家賃収入と利回りにしか興味がありません。それと3~5年後にいくらで売却出来るかを考えます。

おのずと収益価格が主流の値付けです。かかった建築費など知ったこっちゃありません。すると3億3千万円が値ごろ感です。売り手は、これでは投資代金の66%しか、回収できないことになります。もっとも、土地代は元々相続でもらったからタダだと思っている節がありますが。

大げさに言えば、新築賃貸マンションを建てた瞬間に1億7,000万円損したことになります。しかし、相続では貸家建付け地となり、広大地が適用され、税の大巾な軽減は受けられます。

一方、時価の概念では、3億3,000万円から建物代の2億3,000万円を控除した価格が土地代ということになります。

3億3,000万円 - 2億3,000万円 = 1億円(土地代)

1億円 ÷ 1,000㎡ = 100,000円/㎡

建売業者に売れば270,000円/㎡だったものが、マンションを建てたお陰で?100,000円/㎡になったのです。正面路線価の1/3になったので、広大地として認められるのは当然の事と言えば皮肉でしょうか。