【 人の価値と土地の価格について 】
人を評価するときには何故か「値決め」「値付け」とは言いません。しかし土地を評価するときは「値決め」「値付け」といいます。これを見ても昔から人の評価を金銭に置き換えるのには躊躇する思考があるのだと安心します。
とはいえ経営者(社長)が社員の給料や賞与を査定するときには、その人の価値をいかに金額に反映させるか苦労することが多々あります。評価される方は自分の価値が適正に評価されているか、つまりもらう価格(給料等)が妥当かどうか気になるところです。しかし、ほとんどの人は自分の価値に見合った額をもらっているとは思っていません。それだけ人を金額に置き換えるのは難しいことです。私も約30年間社長の立場にいましたので、それなりに考えその人が納得してくれる金額を出すことに注力したつもりです。
とは言え、社長が決めた金額に誰も異議を唱えることはしませんので独り善がりになる弊害は免れません。特に派遣と言われる非正規労働者といわれる人々の冷遇ぶりは如何なものかと慨嘆せざるを得ません。
しかし、かなり少ないケースと推察(の域を出ませんが)しますが、価値に見合う以上の価格(給料)をもらっている、と感じる人もいることでしょう。そんな風に思ってくれる社員がいる会社が理想です。
いずれにしても、人が人を評価する場合は多くのケースで価値=価格となっていないのが現実の世界だと思います。これは、コロナ禍でますますこの傾向が強まることになるはずです。かつて経営者の端くれだった者として現経営陣には大いに注意を払っていただきたいと思います。
次に土地の価格についてです。
前回のニュースで触れたようにいわゆる高級住宅地と言われる土地価格は公示価格の1.5倍、ないしは路線価の2倍程度に売れているという話をしました。この取引事例は公示価格の基礎になるものだけにあまりにもその乖離があると公示価格の信ぴょう性に疑義が生じてくることも確かです。しかし公示価格はどうしても後追いになる分、致し方ないことでもあります。また、この取引事例は時代とともに先行する傾向があります。これは人の持つ欲望との関係性があると思っています。これがバブルです。バブルの定義付けすると「価値に見合わない価格がつけられる」ことです。特に投資用物件などは買った時よりも高く売りたいのが人の思考の常ですからその傾向が強まります。それと情報の非対称性という厄介な情報格差が輪をかけることになります。昭和~平成バブルはその最たるものでした。次がリーマンバブルです。では今はバブルかと問われると個人的感覚から言うと、知らないうちに皆が寄ってたかって起こしたバブルです。これは2019年秋がピークでした。コロナ禍の現時点は下がるかと思いきや、実需ベースではまだ持ちこたえているのが実態です。
しかし、都心部収益不動産や郊外でも低くなり過ぎた還元利回りなどははげ落ちてくるでしょう。それは収益価格が下がる要因ですので投資マインドも下がり、これから大きく下がる可能性があると思っています。このように土地価格は常に一定ではなく、所有している人や時代により価値に見合うものとは限らないのです。
不動産鑑定士による不動産鑑定評価は現時点でのものであり、総じて先読みをすることが出来ないことにあります。(但し,DCFを使う時などは将来賃料の値上げ、値下げを想定しますが)もちろん、将来性を読んで売却や購入のアドバイスは可能です。
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