~首都圏分断「移動なき社会の未来」テレワークで増える「自宅2km圏」で暮らす人々~

日経ビジネス社の記事(2020.10.05 No2060)を引用

 

これらのことを参考にした私なりの地価形成要因についての考察です。

東京の住宅地の地価は基本的には東京駅周辺の丸の内、八重洲、銀座、新橋、日本橋等を基点として、それらの外周部である上野、池袋、新宿、渋谷、五反田、品川駅が住宅地のいわゆるターミナル駅としての機能を果たして来ました。よって、東京駅に近い二番町、三番町、麹町などの千代田区の住宅地が最高価格を維持して来ました。つまり住宅地の最高価格は千代田区であることに異論はありませんでした。それに続く港区には青山、赤坂、麻布、白金、高輪等のブランドを持った住宅地があります。これは東京駅に近ければ近いほど勤務先のある、丸の内・大手町への利便性に優れており、これが地価を形成する大きな要因になっています。この構造が簡単に崩れることはないとは思いますが、しかし、① 先に掲げたテレワークが進むと都心への通勤が必要なくなるのではないか、という疑念が生じてくるのです。② さらにドローンの進化形である、空飛ぶ自動車(エア・モビリティ)の開発が急ピッチで進む可能性が出てきます。ドローンの動力の命である電池ですが、スリーダムという会社(日経産業新聞7月27日参照)による高性能のリチウム電池の開発が進んでおり、航続距離が大幅に伸びるとのことです。③ さらにコロナ禍により、商業地にも異変が起きつつあります。新橋駅等のいわゆるサラリーマンの聖地といわれる飲み屋街にもその波が押し寄せており、多くの飲食店の稼働率が落ちていることが顕著です。また、銀座の店舗にも異変が起きています。「家賃を半分にしてもいいので入りませんか」といった勧誘があるそうです。

これは特に高坪家賃を得ることが出来ていた1階の家賃の下落、あるいは空き家状態が続く恐れもあり、このことは、いわゆる利回りの上昇につながり、収益価格の下落に反映されることになります。そうすると、住宅地でいえば、都心への距離の優位性が、商業地でいえば、都心ビル街との親和性が地価形成の大きな要因でしたが、これらが失われる可能性があります。

団塊の世代である70歳前半(昭和22年~24年生まれの若者が学校や職を求めて東京に出てきた世代)の人々は、都心まで1.5~2時間かかる横浜・埼玉・千葉・八王子等の新興団地に土地を得て都心に通勤していました。それが当たり前の時代でした。それも乗車率200%を超える超満員電車です。当然、都心から40~50キロ離れていた住宅地も、これらの需要に支えられ、さらに一定の地価上昇に恵まれて(?)老後資産としても熟成したのです。ざっくりいえば都心に近かれば近いほど地価単価は高く、遠くなればなるほど低くなる構図が形成されていきました。

もちろん都心の優位性がそう簡単に崩れることはないと思いますが、3~5年単位で考えると電車で通勤という概念が大きく変わることは明白です。つまり、今まで50年以上費やして築いた地価形成要因が変化することに気づくべきだと思います(あくまでも仮説ですが)。