【前回から続く】
当時(9年前)間質性肺炎という病気がこれほど恐ろしい疾患とは、恥ずかしながら知りませんでした。
我が女房が罹ってしまった病気は何かをネットで調べることにしました。すると、出るわ出るわ。いかに世の中でこれに苦しんでいる人が多いことか知ることになりました。
簡単に説明します。肺の末端組織に「肺胞」というのがあり、その袋が膨らんだり閉じたりして酸素の取り込みをします。それを守るための外部の組織全体が間質と呼ばれます。この間質が何らかの原因(今のところ不明)で硬くなり、肺胞が思うように開閉出来なくなります。そうすると酸素が思うように取り込めないので、常に苦しさが付きまとうようです。
普通の人でも電車に駆け込むため30mの距離を全力疾走すると、ハアハアして息が切れます。しかし数分もすれば何とか落ち着きます。女房が言うにはその状態が普段でもずっと続くそうです。常にマラソンランナーのようだねと自嘲気味に話していましたが、これは相当辛いだろうと思っていました。
それでも退院後は体力維持のためと自宅周辺を歩くように頑張っていました。とはいえ、せいぜい100m~200mの距離です。
私は、ママの航続距離はせいぜい100mだよね、それ以上は電池切れで無理だな、などと冗談を言ったものでしたが、今思うと申し訳ない事を言ったと恥じています。病人への配慮がまるでなかった。これを読んだ方にお願いです。病人にはどうか優しさで接してあげてください。本人が一番苦しいのです。30m歩いては一回休み、また30m歩いては一回休む。そんな苦労をしていた人への優しさがまるでありませんでした。
幸いに自宅は駅近だったので、周辺には5軒ほどのカフェがありました。当時はまだ好きなカフェに自力で行けたので幸せな時間でもありました。
家事も何とか簡単な料理と洗濯は出来ていました。それを終えて午前中に行くカフェには、窓側の席が指定席になっている常連のおじさんが必ずいるのよと笑って話していました。そんな幸せな時間が約1年は続きました。しかしその後、恐れていたことが現実になりました。
右足の付け根辺りが痛いというのです。私は色々な本やネットで得た情報から、これはステロイドの副作用ではないかと嫌な予感がしました。どうか、違っていてくれと思いました。
近くの整形外科で診察を受けると、大腿骨骨頭(付け根の丸い骨)部分にひびが入っていることが分かりました。ステロイドは末端の骨などに行く血流を悪くします。その時期は既にステロイドは止めていたのにも関わらず、後から来るのです。予感は当たってしまいました。
もっと怖いのは、最初は片足だけでも両足に来る可能性があるというのです。放っておくと骨頭部分に壊死が起こります。骨折と同じ状態なのでかなりの痛みを伴います。
これを改善するには人工骨を挿入するしかありません。躊躇する間もなく同じ大学病院で手術に踏み切りました。幸いにも手術は成功して、1カ月後には退院することが出来ました。さらに幸運だったのは、左足には来なかったことです。
余談ですが、かの美空ひばりさんも同じ病気に罹り、両足とも大腿骨骨頭壊死で人工骨に取り換えています。
普通に話すことも歩くことも容易ではない私の家内を見ていて、あの東京ドーム公演は命がけのステージだったことが良く分かります。そして、その1年後に亡くなっています。
昨年亡くなった八代亜紀さんも、膠原病からくる急性間質性肺炎の増悪と伝えられています。
【次回に続きます】
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