路線価はいわずと知れた公示価格の80%程度に設定されています。これは平成4年からのことです。ついでにいうと、平成3年から70%程度になりました。もっとついでにいうと、その前の年、平成2年はどうだったでしょうか。お分かりになりますか?

この文章はクイズではないので書きますが、何と公示価格の50%以下だったのです。実は公示価格に連動していなかったのです。基準がなかったといっても過言ではありません。さらに地域によっては40%を切る場所もありました。時はバブルがまだ色濃く残っている時代です。

つまり、不動産を所有している人に(仮に時価(公示価格ベース)1億円の土地とします)、相続が発生した時には、相続税評価額は路線価評価で良いので5,000万円以下になったのです。

だから、その時代の相続税対策は借金して不動産を買えでした。仮に現金1億円持っている人は当然ながら1億円に課税されますが、それに1億円の借金をして2億円の不動産(建物付きなどの収益物件)に換えれば、相続税評価額はざっくりと1億円になるわけです。

こんなことは庶民には無理でしたが、いわゆる富裕層には受けました。金融機関も喜んで貸しました。大流行です。(ただし3年縛りといって、買ってから3年経たないと買った価格に課税されました。これは現在も同族法人が買った不動産は、3年間経たないと買った価格が相続税評価になる制度があります)。しかし、国税庁は、いくら何でも路線価評価が低すぎるのはでないか、如何なものかとようやく気付くのです。それが平成2年頃でしょうか。そして、平成4年に国土交通省所管の公示価格にちゃっかりと乗ってきたわけです。

それ以前、不動産鑑定士は、路線価など全く使えない代物なので歯牙にもかけませんでした(当時の思い出として路線価に3倍したら丁度、時価などと使っていたぐらいです)。だから無視していました。しかし、平成4年から公示価格(の80%程度に設定する)にお世話になるからといって、各国税局は、路線価精通者として不動産鑑定士を傘下にしたのです。不肖私もその一人になりました。その頃は国税局からお仕事が頂けるといって喜んで受けたものです。

しかし、世の中はバブル崩壊に向かっていました。私の記憶ですが、平成3年夏ごろから急に雲行きが怪しくなりました。当時の大蔵省と日銀の行った金融の総量規制という施策です。不動産業界と金融業界は一体化していたので、あっという間に不動産の動きが止まりました。取引が急減します。土地価格の下落が始まったのです。平成3年に公示価格の70%程度に設定した路線価では売れない状況になったのです。

よって、国税庁は平成4年4月に苦渋の決断で、下記のような事務連絡を出さざるを得なくなったのです。

①は1、2回読んだだけでは理解できません。言葉を補って分かりやすい文章とするなら私は①を次のように書き直します。「相続税の申告において土地等の場合、評価通達に基づく路線価評価で算定した価額が適正な時価を大幅に超える高い評価額となる場合には、必ずしも路線価評価で申告しなくてもよい」 つまり適正な時価を何らかの形で証明できるのであればそれにより申告しても構わない、としているのです。 

(来月に続きます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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