「収益物件に路線価は決められない」

 いわゆる更地(仮に自宅など自ら使用する土地)の上に自用の建物を建築した時などは評価上、土地と建物に分けることは容易です。

しかし、土地(更地)上に他人に貸す目的の収益マンションやアパートを建てた瞬間に土地・建物の評価は厳密にいうと、一体化して切り離せなくなります。つまり、土地がいくら、建物がいくらは税務上(消費税や所得税など)必要不可欠なので致し方なく表示はするものの、一体として土地・建物が機能する以上、総合的な値段であるのが実態です。例えば3億円の収益物件というように。

つまり、土地が収益物件の敷地になれば土地の路線価のみならず土地そのものの価格という概念はほぼ消えているのです。投資家は土地がいくら、建物がいくらかはそれほど気にしません(もちろん全くないとは言いませんが)。全体としていくらかに関心を示します。いわゆる投資利回りが最も重要な指標になります。先の3億円の収益マンションに例を採ると表面4.5%の利回りが得られるなどです。

では、収益(賃貸)マンションに路線価という概念はないことを簡単に証明しましょう。

 

「同一道路上(路線)に存在する」

 A地300㎡には築年40年の木造2階建てアパート(1DK20戸)が存在し、隣地のB地300㎡には新築の鉄骨造4階建てマンション(1ルーム30戸)が存在するとします。これらの違いは何かというと賃料収入が全く異なるということです。

仮に、Aの家賃収入が月間120万円(年間1,440万円)、Bの家賃収入が月間270万円(年間3,240万円)とします。この物件の収益価格は、Aは2億8000万円、Bは7億円程度になります(詳細は省略します)。

当然、建築費の差はあるにせよ、土地価格が同じになることは絶対にありません。つまり、隣地同士にある面積と地形が同じ土地でも、建物の種別や種類によって土地価格が全く異なることになるのです。

だから、収益物件において路線価はこれだと決められないというのが正解です。

ということは、同じ路線価上にある2つの土地を、正面路線価に借地権割合60%×借家権割合30%=18%を控除した82%を乗じたものが貸家建付地という通達評価は、ほとんど実態を表していないということになるのです。

賃貸マンションなどの収益物件は、その土地上に建っている建物による個別性を反映させないと、適正な評価が出来ないということです。

 

 

 

 

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