所在地 ◯◯区
街路・画地 幅員5m区道に面する間口1.6m・奥行28mの路地状敷地
用途地域 第一種中高層住居専用地域(建ぺい率:60% 容積率:200%)
面積 土地130m²
地域性 ◯◯駅西方500mの中規模住宅地域
路線価 580,000円/m²

ポイント

対象地は、道路と接道する間口が1.6m(2m未満)しか無いため、建築基準法第43条により再建築が出来ない不動産です。
◎建築基準法上の道路に2m以上面しないため、建物の再建築は不可。

  • 隣接地を買収し、2m以上の間口にしたうえで、低層戸建住宅の敷地(路地状敷地のため、特殊建築物は不可)
  • 現状維持(既存建物を修繕維持)
    現実問題として、対象地の間口部分を買収できる余地が無いため1の方法は採用できません。よって2による評価となるのですが、建物が建築できない土地は相当の減額となってしまいます。

鑑定評価作業

再有効使用の判定

対象不動産の画地条件、近隣地域の標準的使用の現状と将来の動向・公法上の制約規制等を総合的に検討・勘案の結果、現状のままでは建て替え等が原則として出来ないため、現在の木造建物を修繕しつつ維持していく方法が、最善と思われます。

なお、建て替えによる再有効使用を考えるには、前提として路地状部分を買い増して、その幅員を2mにした上で、低層戸建住宅の敷地としての使用であると判断します。

標準画地価格の査定

幅員5m区道に敷地規模300m²程度の整形な中間画地を想定しました。

比準価格:830,000円/m²
規準価格:720,000円/m²
収益価格:660,000円/m²

以上より、標準的画地価格を800,000円/m²と査定しました。

評価

800,000円/m² ×(1-0.70(注))×130m² =31,200,000円

(注)対象不動産の個別的要因
個別的要因の内訳 増減価率
袋地(形状)による減価 -15%
間口狭小で極端に劣る -20%
日照通風で劣る -5%
建築不可による利用効率の劣る程度 -30%
合計 -70%

解説

対象地の特徴は、都心部にある居住性・利便性が良好な住宅地です。価格水準も高く標準的な土地であれば軽く億を超える価格帯です。

しかし、間口が問題です。建築基準法第43条の規定による2mを満たしていません。つまり建築確認不可物件に該当します。

この地域における土地の価格水準が高いということは、それだけ高い品質が求められるということです。このような問題不動産は瑕疵物件として扱われ市場でも評価されません。よって、標準的な土地と比較して大きな減価が見込まれます。

その他

対象不動産のような画地は著しく個別性が強いため、購入者の動機としては(1)購入後直ちに隣接所有者との土地の売買(路地状部分の買い増しにより幅員2mを確保するか、又は対象地を隣接者に売却する)により「再建築不可」の状態を脱却する、又は(2)長期的に保有しその値上がりを待ちつつ、隣接所有者との交渉の機会を伺うといった方法が考えられます。

しかし、隣接所有者との交渉の成否には大きなリスク(買収できなければ約3,000万円の資金が固定されてしまう)があり、事実、対象不動産の所有者側からこれを打診した経緯があるものの、良い回答が得られていません。

また、長期保有による値上がり期待も、よほど有利な(低い)買い値でなければ、買い手はいないと考えます。

さらに、相続税評価等においては、管理又は処分が困難(売却できる見込みの無い不動産)を理由に物納が認められないほど「再建築不可」物件についての取り扱いは厳しいのが現状です。

以上から「再建築不可」である対象不動産にあっては、取引価格が破格に低くない限り、買い手は無いものと考えなければならない点において、上記価格は妥当と判断します。

再建築が出来ないような土地についての評価は十分な注意が必要です。