過去約30年間で当社において、建築不可物件の鑑定評価受任件数は少なくとも30件以上はあります。

しかし、面積が500㎡を超える物件はそれほど多くはありません。

典型例として大きく分けて4つあります。

① 無道路地(全く道路に面していない土地)

② 接面する道路自体が建築基準法42条の道路ではない土地(ただし路線価が付されている)

③ 接道間口が2m未満の土地(但し1.8m以上あれば例外的に確認を下ろす自治体もある

④ 間口が2mあっても路地の長さが20m以上あるなど、当該特定行政庁の条例に抵触して確認不可の場合(東京都・横浜市など)

 

建築基準法43条には、「建築物の敷地は(建築基準法の)道路に(間口)2m以上接しなければならない」という規定があります。

これは、不動産を扱うプロとしては当り前の法律ですが、一般の方にはあまり知られていません。本来は不動産の基本知識として知っておくべきことです。

上記に記載したように、東京都には建築安全条例というものがあり、路地状の長さが20mを超えるときは間口が3m必要となります。

また、横浜市には建築基準条例というのがあり、もっと厳しい制限があります。このように地方自治体により多少の違いがあるので注意が必要です。

今回取り上げる評価実例は、面積が600㎡を超え、間口及び路地の長さの要件を満たさない建築不可地です。具体的には間口1.7m、路地の長さ21mの旗竿状の形状で面積が700㎡の土地です。これは国税庁が規定する「地積規模の大きな宅地」に該当します。

この土地所有者が亡くなり相続が発生しました。まず基本は財産評価基本通達による評価で価格を査定します。当社に提示された税理士による路線価評価は、約1億6,000万円でした。

この土地が更地であれば、当然ながら一戸たりとて建物が建てられない(所有者には申し訳ないですが)欠陥土地です。

相続人は長男と妹さんでした。この土地には50年前に被相続人が建てた自宅があり、長男家族と同居して住んでいます。

相続人も当該土地が建築基準法上、建て替え不可の土地であることを認識しています。この評価はありえないとの思いで、税理士事務所経由にて当社に相談が来ました。

 

さて、当社による鑑定評価ですが、標準的画地価格(間口10m、奥行15mの150㎡程度の土地を想定)を700,000円/㎡と査定しました。 

ここから個別的減価要因を査定します。

標準的画地と比べて▲85%、つまり100点に対して15点程度と判断しました(減価要因の詳細は省きます)。

700,000円×0.15×700㎡=7,300万円(数字は変えています)

さらに、この▲85%という数字は、周辺に存在する同様の条件の取引事例(確認不可物件)5ヵ所を参考に判断しており、恣意性を出来るだけ排除しています。

不動産鑑定士としては、この評価額が適正と判断しました。これで申告することになります。ちなみに固定資産税評価額は1億5,000万円です。

さて、この土地を1億6,000万円で買う個人、または不動産業者がいるでしょうか。

鑑定評価の真髄は、決められた規定に基づくものではなく、自分だったらいくらで買う価値があるか、あるいは市場性があるのかなどを検証し、適正な値段を作るという創造性を発揮する作業であり、真摯な姿勢が必要であります。

 

 

 

 

 

不動産鑑定評価による適正な時価評価

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