価格決定権者は供給者側か需要者側かの古くて新しい議論です。

私は言いたいのです。「今こそ価格決定のイニシアチブ(主導権)を買い手に取り戻そう」と。

とはいえ、不動産業界はザックリこの50年間(ちなみに私がこの業界に首を突っ込んだのは昭和50年なのでかれこれ45年・・・結構長いです)はその閉鎖性という利点? と素人にはほとんど情報が行かない、いわゆる情報の非対称性(情報格差)というやつで飯を食って来たといっても過言ではありません。つまり不動産業界は土地分譲や(建売住宅も同様)マンション分譲を行うにあたってその資本力や情報力を駆使することにより売り手側に立ち圧倒的な価格決定権を支配して来たのです。

当然、一般個人は売主(供給者側)である不動産デベロッパーの前では価格について、普段は意見を述べることは不可能です。弱き子羊のようなものです。まぁ、わずかにバブル崩壊やリーマンショック時の相場下落時の売れ行き不振にうまい具合に大幅値下げ交渉が成立したことはありますが、これとても例外です。

しかし、ここにきて新型コロナショックが不動産価格に及ぼす影響です。今のところ期待の域は出ませんが、買い手側がそのイニシアチブを掴めるチャンスが到来したといえば言い過ぎでしょうか。そうです、売り側に虐げられていた弱い立場から同等か逆転するのです。イメージとしては次の如くです。

売主側(強い)> 買主側(弱い) → 売主 ≦ 買主

では、不動産鑑定基準ではこれをどのように表現しているでしょうか。不動産鑑定士以外はほとんど目にすることのない価格論です。下記の通りです。

『正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう』

この場合において、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいいます。

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加、参入、退出が自由であること。なお、ここでいう市場参加者は、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。

① 売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと

② 対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること

③ 取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること

④ 対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと

⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること

(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと

(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

これが理屈ではありますが、一般個人が②③④⑤を身に付けているとは到底考えられません。本来は勉強しなくてはならないのですが。

ここを先途とばかりに、一般個人も不動産の価値判断を自ら勉強して世の中に対応していく必要があります。最近では東京都区部のマンション価格は年収の11倍程度と言われています。仮に年収600万円の世帯が買うとしたら、6,600万円の物件を買うことになります。私の個人的な意見ではせいぜい5倍程度というのが堅実な買い物だと思っています。

地価公示が上がるから仕方がないとかという前に買う物件が本当にこの価値が妥当かどうかを観る目を養うということが重要です。70㎡の新築マンションが8,000万円を超えたところで、これは何かおかしいと思っても良いかなと思います。

Let’s try 東京アプレイザル土地評価 実力判定テスト

【Q3】 普通住宅地において、間口1.6m、奥行20mの面積130㎡の路地状敷地は、標準的画地と比較して、その価値率は概ね50~60点(50~60%)程度である。

 

さて、この問題「正しい」・「誤り」のどちらでしょう。詳しい解答を希望される方はご連絡くださいませ。(正解は次号に掲載します)

次回をお楽しみに!!