~物件の価値を知ることにより相続対策は一気に進む(かも)~

最近になって、このパターンの相談が増えています。東京23区の更地価格が堅調に推移しており、さらに収益物件の利回りが低下して価格が上昇しているため、時価の把握が重要になっています。しかし、一般の方はこの値段をほとんど把握していません。現金や上場株式は当然のことながらその値段は瞬時に分かりますが、とにかく土地の値段は分からないのが普通の人々です。さらに輪をかけて分からないのが、賃貸アパート・マンション等の収益物件の値段です。築25年以上になると修繕費のかけ方や管理の良し悪しにより価格に大きな影響を及ぼします。よって普通の方々には難しいのです。これらの価格を把握していないことにより、どこに問題があるのかどうしたらよいのかが理解できないのです。私の持論ではありますが「土地の価格が分かれば相続争いが一気に減ります」と言って憚りません。

先日、あるハウスメーカーの紹介で妹さん(50代)とお姉さん(60代)のお二人が相談に来ました。実は相続人はもう一人(50代の弟)いるが、引きこもり状態の無職で悩んでいる。一緒に相談に行こうといっても「姉さんたちに任す」と言って来ないのですと諦め顔です。

余談ですが、40代50代の独身男性の無職の人がいる相談者のケースがもう二組います。困った時代です。

今回のケース、お母様はすでに他界しています。お父様(80代後半)の所有物件は下記の通りです。

某私鉄沿線の駅から600mほどの距離に所在する

① 自宅敷地約180㎡に築45年の木造住宅

② 自宅から近所にある土地110㎡に築15年の鉄骨造賃貸アパート

③ 何故か自宅から遠い準都心部にある160㎡に築2年の軽量鉄骨造賃貸アパート

尚、これらの物件の当社鑑定部による概算評価は以下の通りです。

① 約8,500万円(お父様と弟が同居中)

② 約8,000万円

③ 約1億9,000万円

④ 現預金 約1,000万円      遺産総額3億6,500万円

 ただし、お父様の借金(債務)はアパート資金等で借りた金額が約1億円残っています。また、現金の1,000万円はお父様の今後の病院代や生活費であてには出来ません。そうすると純資産は2億5,000万円程度です。当然ですが、相続税評価は路線価評価になりますので、この評価よりも大幅に低くなります。よって小規模宅地等を使えば相続税額は3人合わせても数百万円程度ですので、税金の心配はほとんどありません。

問題点がこれではっきりしました。これを3人でいかに分けるかです。

お姉さん達の心配事は実家の古さです。傷みが激しくとても寒い家らしいのです。昔の家は断熱材もほとんど使われていないので冬は寒暖差が激しいのです。それと無職の弟さんです。この先30年無年金でもあり生活費をどのように確保していけばいいのか悩みは深いです。

ここで私は①の自宅の建て替えを提案しました。半分売って4,000万円を現金化して、その内の2,000万円を自宅建築資金に充てる。残った半分は税金を払っても1,500万円程度残るので、いずれはこれを弟の生活費の足しにするということです。これでお父様の快適な住居を確保できます。自宅の半分とはいえ売却するのは姉・妹の承認がないと出来ませんが、これは弟に生前に相続させる(イメージですが)という意識があれば問題ありません。いずれお父さんが亡くなれば、その自宅分は弟が相続します。

とはいえ、まだ完全ではありません。収入のあるアパート2棟の分け方です。これについては、全員で話し合いをすべきと引導を渡しました。幸い、お父様は認知症もなく元気でおられるとのこと。弟さんの意見もあるので多少の時間をかけて一家の行く末を考えて下さいと言って当社を後にしました。多少はお姉さん達のお顔が晴れやかになった気がします。

再度、言います。不動産の値段が分かれば問題がかなり改善します。お母さんに先立たれた一家と相続人が3人いれば揉め事が増えます。

(この記事はエヌピー通信社「税理士新聞」より転載したものです)


Let’s try 東京アプレイザル土地評価 実力判定テスト

【Q2】

普通住宅地において、間口2.5m、奥行20m、面積130㎡の路地状敷地は標準的画地と比較して、その価値率は概ね90~95点(90~95%)程度となる。

さてこの問題の答えは「正しい」、「誤り」のどちらでしょうか?

 

解答を希望される方は、下記までご連絡くださいませ。

 

【前回の答え】  「誤り」

<解説> この価格水準の住宅地は標準的な面積が110㎡である。よって300㎡の土地を買う市場参加者は概ね不動産業者と推測される。業者は、この土地を3区画に分割して売る方法をとることになる。すると、路地状敷地が2区画と整形地が1区画となるため、全体の単価は30万円/㎡より低下するのが通常である。

いかがでしたか?

もっと詳しく聞きたい方は、下記までご連絡くださいませ。

よろしくお願いいたします。