ちせk住宅地では都心からの距離や最寄り駅からの距離により、地価は様々に変化します。つまり、駅やターミナル駅に出来るだけ近いほうが利便性に優れていることから、土地の価値は相対的に高くなります。

しかし、鑑定評価の考え方では、仮に同じ500mの距離に存在する土地であっても、最終的に価格を決定するのは「個別的要因」といって、土地そのものの個性を判定することが重要です。最終的な値付けはこれが重要です。また、買うことは売ることにもつながるからです。失敗しない不動産投資(自宅購入も投資の一形態)の極意です。

(何故、そんなことが言えるかですって?さんざん失敗した経験者だから言えるのです。)

その主な要因は下記の通りです。

1.形状(長方形や正方形などの整形な土地かどうか)

三角形や凹凸のある土地は安く買えたとしても売るときに評価されません。日本人は形に拘る人が多いのが実情です。余談ですが中古車なども「白」やシルバーが無難で売れ筋です。赤やグリーン、オレンジなどは売れにくいと言われています。

2.前面道路の幅員

道路幅が4m未満であれば、セットバックといって中心線から2mバックしたところが建築可能な敷地になります。やはり、最低でも4mは欲しいところです。私の個人的意見ですが6m道路が理想です。生活上の環境面や、特に自動車運転上、すれ違う時の余裕は6mが良いと思います。当然ですが、4m道路と6m道路では幅員だけで2~3%程度の差が生じます。

3.間口と奥行き

建築基準法43条には「建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない」という規定があります。つまり、建築確認を受理するためには間口が2mないとダメなのです。仮におじいさんが40年前に建てた住宅があったとして、それを息子が建て替えなどするときに、改めて建築確認を得る必要があるのですが、2mないと許可されないということです。ですから、建売住宅では必ず間口を2m確保して「路地状敷地」または「旗竿敷地」として販売します。しかし、現在は2mでは車を入れるのに窮屈なので、間口を2.5m~3mにして売るのが一般的です。

この路地状敷地は単に間口の問題だけではなく、自ずと形状も不整形になります。整形地と比べると間口と形状減価で15%程度下がると思います。

ということで、土地の価値を決めるうえで「間口」はかなり重要なポイントです。これも私の意見ですが、間口は少なくとも10mは欲しいところです。

余談ですが、豊臣秀吉が京都の町家に税金(現在の固定資産税)をかける時に、間口の広さによって課税したと云われています。よって、京都の町家はその課税から逃れるために、間口がせいぜい2間(約3.6m)に対して、奥行きが12間(約22m)ありました。これが「鰻の寝床」と言われる所以です。

4.道路面との高低差

東京都内ではそれほど多くは見られませんが、神奈川県横浜市・川崎市北部や横須賀市・鎌倉市などは段差や傾斜地の宝庫です。物によっては3~4m近い擁壁の上に住宅が建っている現場もあります。

私が住む練馬区は、ほとんどが平坦な畑を潰して造成した住宅地なので傾斜地はほとんど(少しはあるが)ありません。

最近は空き家問題があちこちで勃発していますが、このような段差がある物件が顕著になっている感じがします。階段を10段も上がる(下がる)となると老人には苦痛というか無理なのです。若い時は良かったものが逆になります。

よって、土地の価値としては残念ながらかなりの減価要因になります。所有している人には申し分けないのですが。

5.方位

いわゆる、南道路、北道路のことです。日本人は太陽が大好きなので南道路信仰は相変わらずです。ちなみに私の自宅マンション(社宅、つまり賃貸)はお陰様で南向きと一部西向きの角部屋なので冬の日中は暖房はいりません。これも余談ですが神社は全て南向きです。(北向きの例外もあるとのことですが)

現行の鑑定評価の基本では北道路を100点とカウントします。南道路では105点とします。個人的にはもっと差があると思いますが。昔は東道路を100点にしていたのですが、固定資産税の課税上、北を標準にした方が何かと説明しやすいという事情で北道路を100点にしたのです。

建売などでは北を100点にすると南道路は110点にしているケースもよく見られます。もちろん、これも前面道路の幅員により変化します。幅員が2.7mしかない南道路よりも6mの西道路の方が良いということです。

6.面積

これが価格を決定する上で微妙な影響を与えます。例えば隣同士にある整形な100㎡(間口10m・奥行き10m)と200㎡(間口13m・奥行き15m)でもその単価は変わる可能性があります。売れ筋が100㎡程度であれば、200㎡の土地は総額で売れにくいのです。よって、10%程度単価を下げる必要が出てきます。これが、例えば300㎡もある路路地状敷地や極端な不整形地では尚更その減価要因が強くなります。

これが、もっと大きい土地「地積規模の大きな宅地」になれば、相続税基本通達でも大きな減額が可能になります。

 

また、1~6のこれらの要因が複雑に絡み合っている物件もあります。さらに言うと道路に面さない土地三重苦・四重苦といった土地も世の中にたくさん存在します。

不動産は目利きと美的感性が必要と思っています。

 

※この記事はエヌピー通信社「税理士新聞」より転載したものです。