明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

土地の持つ価値を適正な尺度に基づいて判断あるいは判定により価格を決定することはとても重要なことです。これを担うのが不動産鑑定士であり不動産鑑定制度です。今回はこの不動産鑑定とは一体何なのか、世の中にどのような形で寄与・貢献しているのか解き明かしたいと思います。

まずは土地評価の基礎である地価公示制度を紹介します。

これは地価公示法に基づく、地価の公示制度で(国土交通省が所管する)全国に1,635地点あり、その地点ごとに2人の不動産鑑定士が担当し、毎年1月1日時点における当該対象不動産の価格を公表する制度です。これは、相続税の申告の基本となる路線価(国税庁所管)と固定資産税を課税するための固定資産税評価額(地方自治体所管)の大元になる評価額です。但し、残念ながら一般の人にはほとんどその存在を知られていないのが現実です。

まずは具体的な公示地を掲載して公示地とは何かの入り口にしようと思います。

このポイントは私が住んでいる西武池袋線「石神井公園駅」から徒歩8分程度の中級程度の住宅地です。

 

この地域において実際に販売されている新築建売住宅の敷地面積はどのぐらいでしょうか。ざっくり言って100㎡~110㎡程度です。

私はこの地域に住んでおり暇を見ては、周辺の建売住宅をぶらぶら見て歩くのが趣味のような時間つぶしをしています。それは自分の土地の相場観やどんな建物が売れ筋なのかを常にブラッシュアップする必要があると思っているからです。

2年程前から注目していた、石神井公園駅から10分の、とある現場は10棟の建売でした。総額で8,000万円以上とかなり強気な値段設定だったようで、完成して売り切るまで約1年半かかりました。現地を通りかかるたびに(良くいくレストランへの車の通り道のせいもあり)売れ残り物件の、のぼり旗が掲げられており、売買の難しさを体験できます。このぶらぶら歩きは仕事と興味(健康にもいい)とが両立する楽しいひと時を味わうことになるのです。

この物件は最近になってようやく完売したようです。もちろん最初出した値段で売れたかどうかは分かりません。

これとは別に自宅近くに一昨年、相続が起きた地主さんがいます。相続税の納税資金にするためなのか、今年の初めにその地主さんが所有する畑(生産緑地)を大手建売会社が購入しました。現在、宅地にするための開発工事を行っています。駅から約5分の建売現場です。来年5月に建売住宅が完成する旨の看板が掛かっています。この土地面積も大きい区画が110㎡、小さい区画で100㎡となっています。(写真参照)

なお、練馬区における「まちづくり条例」の制限では第1種住居専用地域、建蔽率50%、容積率100%における1,000㎡以上3,000㎡未満のときの開発面積の場合は、その全区画数の2分の1以上を110㎡以上の区画とし、かつ残りを100㎡以上の区画にしなければならないとの規定があります。

先程掲げたこの公示地の面積は165㎡と現状の近隣地域内での建売住宅の土地面積よりやや大きい面積になっています。本来であれば、もう少し小さい面積の敷地を公示地にしてはどうかなとは思いますが、古くからの公示地点でもあり許容範囲でしょうか(これはあくまでも私の個人的見解です)。では、この公示地の価格を決める方法はどうなっているでしょうか。

評価書の表題部に比準価格410,000円/㎡、収益価格278,000円/㎡と記載されています。これより、比準価格を中心にして公示価格を401,000円/㎡と決定します。比準価格というのは、先ほど挙げたような事例の取引価格を対象不動産と比較検討して評価する方法です。その比較項目は主に地域格差と個別格差に分かれるのですが、まずは地域格差を検討します。

これには4つの要因があります。①交通接近条件②街路条件③環境条件④行政条件です。鑑定評価書では概ね5事例程度を選択して、その比較を行います。そして、地域における標準的な画地の価格を求めます。本件対象地は元々標準的な画地ですので個別格差は100と考えます。実は平成31年度の地価公示より鑑定評価書の表題部だけではなく、全文公開される予定になっており、先に記述した比較項目の詳細な部分が明らかになります。

なお、対象公示地は住宅地ですので、収益価格は参考に留めるのが一般的な考え方です。逆にいえば、この土地にアパートのような収益物件を建てても最有効使用の原則からは外れるということも理解すべきです。この件は結構深い話です。稿を変えて議論したいと思います。