私見ですが、今回の広大地を廃止した財産評価通達「地積規模の大きな宅地」はより時価に近づいたというのが率直な感想です。ハッキリ言って広大地という穴だらけの評価方法から見ても格段に精度が上がりました。下世話な言い方で恐縮ですが「やられたなあ」・・・というところです。
というのは、不動産鑑定士の出番が狭くなったのかな・・・というのが世間相場です。
では、この「地積規模の大きな宅地」の評価方法の出来が良い理由はというと、規模格差補正率(有効宅地化率といってもいい)の精度の高さです。また、傾斜地では傾斜度ごとに宅地造成費を変えており工夫が見られます。
このようなことより、路線価が1㎡20万円を超える地域ではかなりの急傾斜地でなければ宅地造成費が売買価格に吸収されるので鑑定評価の出番はありません。
しかし反対に路線価が1㎡当たり10万円以下の地域では、宅地造成費のウエイトが大きいため、鑑定評価の時価の必要性が出て来ます。
ということで、不動産鑑定を本業とする立場として、このまま手を拱いていても始まりません。何か問題は生じないのか、全ての土地の相続税評価はこれで解決するのか、足りるのか、間に合うのかを考えたのが本書です。「そうは問屋が卸しません」と鑑定業界が声を上げなくてはなりません(といっても私ぐらいしかいませんが)。
ここで、「地積規模の大きな宅地」を使って良い土地と、使わない方が良い注意すべき土地を超バッサリと切ってみます(ただし、あくまでも個人的見解です)。
1、使って良い土地(面積基準・利用区分等の基本を踏まえたうえです)
正面路線価が5万円以上でほぼ平坦な土地(つまり平坦地であれば、面積基準を満たせばほとんどの土地が該当することになる)
ただし、
①奥行き補正
②不整形補正
③側方加算
④無道路
⑤がけ地
⑥容積率
⑦セットバック
⑧規模格差
補正等の項目をきっちりと計算する必要性があります。
2、使わない方が良い土地(鑑定評価を検討すべき土地)
ただし、鑑定評価が有利かどうか試算等を行い必ず事前チェックが必要です(事前相談なしに鑑定評価の正式依頼を受けるのは厳に慎むべきです)。
① 地区区分が中小工場地区で路線価が10万円/㎡以上で奥行きが30m以上ある土地
② 東京23区内で容積率が300%以上の地域で間口が6m以下の土地
③ 同上の地域で、どう考えても戸建て住宅が最有効使用と思われる地域
④ 三大都市圏外で容積率400%以上の地域で間口が6m以下の土地
⑤ 同上の地域で、どう考えても戸建て住宅が最有効使用と思われる地域
⑥ 路線価が10~15万円程度で急傾斜地の宅地、山林、原野
⑦ 路線価が5~10万円以下で道路面からの起伏があり造成費が嵩む宅地、山林、原野
⑧ 道路面より3m以上高低差の地盤面にある宅地、山林、原野
⑨ 間口が2m未満や無道路の土地
⑩ 前面道路が建築基準法42条の道路に該当しない場合
⑪ 平坦地でも奥行が長すぎる長方形状の宅地