地積規模の大きな宅地で生じる新たな問題
これは大きく分けて2つあると考えます(あくまでも私見ですが)。
それは、①制度上の問題点と、②評価実務上の問題点です。
① 制度上の問題点
先述したように、今回の規定から除外された項目が何点かあります。
イ)地区区分の中小工場地区が除外されたこと
ロ)容積率が東京23区は300%以上、その他地域400%以上は除外されたこと。また、この容積率の判断は前面道路の幅員は関係なしに指定容積率で判断すること
ハ)市街化調整区域は例外規定を除いて認めないこと
ニ)三大都市圏500㎡未満とその他都市圏1000㎡未満の土地は認めないこと
このことは、これに当てはまれば、まさに問答無用で除外するというかなり割り切った規定になったという印象です。
② 評価実務上の問題点
①とも被るのですが、実際の時価評価の観点からの検証が必要と考えます。単に決まり事だか らこの土地の評価はこれで良いのだという議論は危険です。
例えば、先に述べた市街地農地や山林などの造成費なども傾斜度10度だからこの数字、傾斜度20度だからこの数字といっても、現地調査の上、高低測量などをしなければ見積もることは出来ません。戸建て開発用地においては完成宅地にするための造成費が土地価格に大きなウエイトを占めるからです。
また、容積率についても鑑定実務的には、指定容積率は300%でも基準容積率が160%になる土地を300%と同じに考えろと言ってもこれは無理があります。また、後述するように地形や日影規制によっては、まったく300%は使えない土地も存在します。
さらに、500㎡と1000㎡の面積基準です。もちろんどこかで線引きをしなければならないのが規定というものでしょうが、490㎡と980㎡の土地は500㎡や1000㎡と何が違うでしょうか。これをこのまま適用させると、通達上は490㎡や980㎡の土地の方が、500㎡や1000㎡の土地より高くなることが容易に証明できます。
このような矛盾が随所に現れます。これらを是正するためには鑑定評価の役割があると思います。それは、旧広大地では見逃された、より細かい判断が、一層重要になるはずです。
さらに、旧広大地に比べて「地積規模の大きな宅地」の評価は相対的に価格が上がりました。
例えば500㎡以上の土地の場合、旧広大地との比較でその上昇率は概ね32%程度、2000㎡以上の土地では概ね36%、5000㎡以上の土地では概ね70%の上昇になります。このように、大きな面積の土地を多く所有する地主階層にとっては大増税になりました。
このため今後は通達上の評価が時価として妥当かどうかを検証する必要があります。そのためには不動産鑑定評価から見た場合の時価評価と比較してその価格が妥当かどうかを判断することになります。
となり、もともと路線価の高いB地の方が、まったく条件が同じにも関わらず、1,903万円も評価が低くなるという逆転現象が生じることになります。
とはいえ、どんな土地をチェックすべきかが難問です。もちろん全ての土地をやるというわけではありません。必要最低限、このような土地が現れたら要注意だという心構えが必要です。世の中には様々な土地が存在しますが、これから実例に掲げるような土地が現れたら気づいて頂きたいのです。