明けましておめでとうございます。
というにはもう遅きに失した感がありますが、何はともあれ今年もよろしくお願いします。
この東京アプレイザルニュースも回を重ね今回で№256(22年目)になりました。最近はたった月1回のこのニュースも重い日課(いや月課)になりつつあります。お付き合い頂き改めて感謝申し上げます。
年初なので受けを狙うために、何を話題に上げようかと思いあぐねていたところ、(さすがにスマップ解散やトランプ政権やいきものがかり活動休止を取り上げるのも何だし・・・個人的には吉岡聖恵ちゃんが良いですよね)。
先日、読売新聞の夕刊に格好の記事が出ました。
「不動産鑑定士先細り懸念」という大々的な記事です。受験者数がピーク時(2006年、4,605人)から大幅に減少して昨年は1,568人(合格者数は103人)になったというものです。国土交通省はこれに大変な危惧を覚えています。
そのためか、試験問題の見直しをするということで、若い人々が受かりやすくすることは結構なことであるものの、本質はそんな簡単な事ではありません。つまり不動産鑑定士(業界)側が社会からの需要の創出を引き出せるかどうかにかかっているからです。
世の中はAI時代になったら、どの仕事が無くなるかが喧しいのですが、不動産鑑定士は将来ではなく既にその領域に入っていると言っても過言ではありません。
実は私は4年前のこの東京アプレイザルニュース平成24年3月号に不動産鑑定士を「絶滅危惧士業」と名付けて警鐘を鳴らしました。このままでは、不動産鑑定士への仕事の依頼が無くなる、まるでフィルム・マッチ・レコードのように世の中からその存在意義を忘れ去られるようなことになるかもしれないという、私が生きてきた業界が無くなるのではないかという恐怖にも似た感情です。
現在は一応8,000人の登録者がいます。(感覚的には実働は5,000人代ではないか)が、このペースで行けば30年後には100人 × 30年 = 3,000人しかいなくなるかもしれません。そんな資格が国家資格と言えるのか疑問が起こります。
何故、このような事態に陥ったのか、不動産鑑定士の役割や業務内容をもう一度整理してみます。
1、 地価公示価格、基準地価格の評価業務(私も30年間従事した)
2、 都道府県、市町村から依頼の公的鑑定評価
(主として道路や公園その他公共用地買収及び売却時の鑑定)
3、 裁判所鑑定(調停・訴訟時の鑑定)及び競売評価
4、 固定資産税評価(3年に1度の特需)
―ここから民間企業―
5、 証券化不動産の鑑定評価(但し、大手10社程度に集中しており中小業者が入る余地なし)
6、 金融機関(担保評価)の簡易鑑定等
7、 税務鑑定(法人税・所得税部門)
(同族間・親族間・関連会社間売買、交換等)
(相続税部門)
広大地判定
路線価評価(通達)以外の鑑定評価
8、 民法上の鑑定評価
分割協議のための適正時価(揉めないための)
遺留分減殺請求のための適正時価(すでに揉めている時)
9、 賃料(家賃・地代)増減額請求のための鑑定評価
10、 会社保有不動産の資産評価(合併・分割・M&A)
11、 借地権・底地の鑑定評価
12、 一般人の所有不動産の売買時における鑑定評価(極めて稀)
ざっと取り上げると以上になります。とは言っても1~5までは普通の人は全く関与しない世界です。まさに不動産鑑定士の独壇場です。
ここで特に重要なものは7、8です。むしろ私はここにしか不動産鑑定士が世の中(一般の人)にお役に立てる部門は無いのではないかとさえ思っています。つまり、あまりにも知名度のない不動産鑑定士を使ってくれる(意識をしてくれる)場面が「相続」なのです。民間部門での不動産鑑定士の生きる道は相続にまつわる様々な評価業務です。もちろん、亡くなる前の事前対策や資産管理や土地有効活用でもその知恵を発揮することが出来ます。
不動産評価においては独占的な地位を占めている不動産鑑定士の役割は相続場面では、今後大きくなります。だから多くの若者には、次代を担うチャンスありと声を大にして言いたい。絶滅危惧種に指定されるまでに。