団塊の世代がいよいよ70歳代以上になろうとしています。私は66歳なので辛うじてその下の年代です(目くそ鼻くそですが)。いわゆる団塊ジュニアと呼ばれるその(ドラ)息子や(ドラ)娘は概ね40~45歳前後です。わが社の社員にも数人います。まぁ(ドラ)の付かない息子・娘もいますが、生まれた瞬間に家にはテレビがあり、電話があり、はたまた車があり、なんていう生活に慣れ親しんだ人々は、昭和20年代に生を受けた人々から見ると、ある意味異次元の世界に暮らす人と思った方が良いと今更ながら思います。まるで異次元緩和が当たり前のような緩い世の中になった如しです。
それは兎も角。
このジュニア世代連中は正規社員であれば世間的にはほとんどがマイホームを所有しています(もちろん多くの賃貸派もいますが)。
大体においてマイホーム所有欲は結婚しているカップルの奥さんが、友人の佐藤さんが買ったので、「あなたウチもそろそろ買わない?」と旦那にねだってかそそのかしてか・・・すると、男としては買えないとは、沽券に関わるなどと、昔の価値観を持ち出して、無理して買うのが世間相場でしょう。自らして「あいつが買ったから俺も」などとケチな料簡で買う漢(おとこ)はあまりいないのではないかと、勝手に思うのであります。それも5000万の35年間住宅ローンという「魔物」に手を出すのです。だから、その子供たちは、それなりに自分たちの家を確保して生活できるのです。なんと幸せなことか。それと、一説には持家を買うことは奥様のご機嫌取り、あるいは家庭円満対策というのがあるようです。であるならば、家を所有する意味というのは日本社会にとっては非常に有益な文化であるということになります。
しかし、当然に家を持てない人や関心がない人、所有権には縁がない人も存在します。その人々は子供の生活や家庭円満に関心がないかといえば、そんなことはありません。無理してローンを借りてまで家の所有権はいらないと思っている人も多いのです。
特にこの10年ほど遡ってみても、なんと自然災害(地震・台風・洪水・火事等)の多いことに愕然とします。新築の家があっという間に流されたり、倒壊したり。今回の千葉県を襲った台風もそうですが理不尽なことが多すぎます。東京都のシミュレーションでは、荒川が氾濫すると、北千住駅が完全に水没する動画が出てきます。
つまり我々の生活のすべてと言って良いほどの「マイホーム」の意味が問われているような気がします。
戦後生まれの団塊の世代が築いたと言って良いほどの持ち家信仰の価値観と、土地価格の高騰によってもたらされた住宅ローンという「魔物」。それに支配されたジュニア世代がいます。その人々が80歳代になる35~40年後の不動産マーケットに、築40年の中古マンションを買う層が残っているでしょうか。1億円の家が2000万円でも売れない時代が、もしかすると来るかもしれません。
いや、そんな将来のことと思うなかれ。年金問題がこれほど騒ぎになるとは、40年前の官僚どもに分かっていたでしょうか。
(この記事はエヌピー通信社「税理士新聞」より転載したものです)