❖実家を守るために不平等を持ち込む❖

東京都心部にある高級住宅地(時価2億円)を円満に分割した事例

 

A家の家族構成は下図の通りです。

230-1

 

この度、父親が93歳でなくなりました。母は5年前に既に亡くなっており税制上の配偶者軽減などは使えません。相続人は長男、次男、長女、次女の4人です。但し、次男は7年前に52歳の若さで亡くなりました。そのため、次男の息子と娘の2人(孫になる)が代襲相続人となります。長男夫婦がこの5年間、同居して認知症の父親の世話と面倒を見て来ました。長女、次女は地方に嫁いでいることもあり、たまに様子を見に来る程度です。

 

A家の相続財産は次の通りです。

230-2

 

 

 

230-3

 

法定相続分は長男、長女、次女がそれぞれ4分の1、孫の2人がそれぞれ8分の1となります。

これを均等に分けるとすると、長男6,000万円、長女6,000万円、次女6,000万円、次男の2人の子ども6,000万円となります。しかし、土地の比率が現金等に比べて圧倒的に大きいのです。これでは分けようがありません。ここで問題になるのは、80%を占める自宅土地の扱いです。

極めて簡単な方法があります。それは、この土地を全部売って換金して分割する方法です。全てを現金化して恨みっこなしで山分けする方法です。 この方法だと長男夫婦はこの10年間母と父を看取り、やれやれと思った瞬間に住み慣れた自宅を売らざるを得ないことになります。長男はまだ65歳です。しかし既にリタイアしています。年金暮らしに入っています。4人の子供たちはこの家で生まれ、育ちました。東京都心とは言え故郷です。実家を完全に売ってしまうのは如何なものかです。

いずれにしても、相続税の申告も必要です。分割協議が成立しなければ小規模宅地の評価減の特例も使えません。

こういう場合に相続に精通している専門家が必要です。長男は、相続アドバイザーの内野さんに相談を持ちかけました。内野さんのアドバイスは次の通りです。

230-4

注意点:

次男の子ども2人(代襲相続人)については、確かに相続人ではありますが、ここは叔父さんや叔母さんの意向に従って分割協議に参加してもらう心構えが必要です。A家の全体を守るための方策であることを理解してもらいます。

これを整理すると、

230-5

長女以下、この分割案に同意して、手続きを進めることにしました。民法上の法定相続分は不動産の比率が大きいと分けにくいのが通常です。兄弟間は均分であるという民法は一端横に置き、このような場合は不平等を持ち込む勇気と知恵が必要です。