【受けた恩義を忘れない・その3】

(前回からの続き)

その救世主となるべき一冊とは「怒りの路線価物語」という本です。

平成4年にダイヤモンド社から発刊されました。著者は、税理士、不動産鑑定士の森田義男氏です。森田さんは三井信託銀行の不動産部に所属していた税務、不動産のプロでした。本の内容は当時の路線価評価(国税庁の通達評価)の問題点を厳しく批判したものです。

不動産は特有な個別的要因により、一律的な評価に馴染まず、様々なケースを用いて路線価評価では適正な評価にならないことを証明したものでした。

国税庁が平成3年に路線価割合を公示価格の約70%引き上げたことにより、より時価に近づいた時代でした。それ以前(例えば平成元年など)は公示価格の30~40%程度(当時は確固たる基準はなかった)だったので、それを逆手にとって現金を不動産に換える等の節税対策が流行りました。これは如何なものかいうことで、国税庁は何と平成4年に路線価を公示価格の80%に引き上げたのです。これにより、土地持ちの相続税が大幅に上昇することになりました(当時の最高税率が70%でした)。

しかし、土地というのは簡単に評価出来るわけではありません、特に、農家地主が所有する土地は計画的に建物を建てたり有効活用をしているわけではありません。とにかくバラバラ、もっというとめちゃくちゃな使い方をしているわけです。鑑定用語でいうと、最有効使用とはほど遠い使用方法です。つまり、個別的な減価要因が詰まっている土地・土地が多いわけです。それを評価通達に基づいて一律的な方法で評価するのはかなり無理があるのです。それらの矛盾や問題点を衝いたのが森田さんの書籍でした。

ここで私がピンと来たのが公示価格の80%ということは、これはもう時価に近いんじゃないかと。それまで路線価や相続には全く無関心だった私には、衝撃的な出来事でした。むしろ路線価など鑑定実務的には何の役にも立たない代物だと半ばバカにしていました。路線価に(坪単価みたいなイメージで)3.3倍したら丁度時価だ、なんていう使い方をしたものです。

しかし、80%になったおかげで、鑑定業務との接点がより近づいたなと思いました。「これはビジネスチャンスでは!」という直感でした。それまでほとんど無関心だった相続関連業務に邁進することになります。

それ以来約35年間、不動産鑑定士事務所を維持継続できたのは幸運でした。

この1冊の本が、私の不動産鑑定士の人生に大きな転換期を迎えさせてくれた、大きな【礎】となったのです。森田先生には感謝してもしきれません。改めてお礼をしたいと思います。

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不動産鑑定評価による適正な時価評価

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