前回の続きです。
いわゆるサラリーマン投資家(アパート・マンション等の収益不動産投資)の話ではなく、古くから農地を所有している、都市型農家さんが相続対策と称して宅地化への転換を図るためにアパート・マンションを建設した地主系の土地有効利用の典型例です。
新宿駅から急行で約20分
最寄り駅 500m
用途地域 第1種低層住居専用地域(建ぺい率50%・容積率100%)
土地面積 600㎡(約100坪)の駐車場にマンション建築を提案された
時価評価 300,000円/㎡×600㎡=180,000,000円 とする
建物面積 600㎡(RC造3階建て賃貸マンション)
建築原価 300,000円/㎡×600㎡=180,000,000円 とする
積算価格 合計 360,000,000円
見込み家賃収入 月額 1,300,000円と査定する
年額 15,600,000円
※この段階では建設会社は建物のみの利回りしか計算しません。
15,600,000円×0.8(必要諸経費)÷180,000,000円=6.9%(ネット利回り)
これだと、見た目はまあまあの利回りに見えますが、実際には地主は土地を拠出しているので、この計算式では片手落ちになるのです。そのことを認識していない人が地主ほとんどだと思います。
つまり本来の計算式は下記のようになります。
土地+建物=360,000,000円がこのマンションの原価ということです。
仮にこの物件をプロの投資家に売ることになったとします。
年間家賃収入 15,600,000円×0.8÷Ⅹ=〇〇万円
Ⅹを仮に6%及び7%にすると
2億800万円~1億7800万円となります。下目の価格だと何と建築費さえ下回ります。建てた瞬間に建物代がゼロになってしまうのです。これならやらない方が良かった。
実は私はこのことが地主土地有効活用の最大の問題だと思っています。「知らぬが仏」とは言いますが、土地の有効活用で何億というお金を動かす以上は知らぬ・・では済まされません。自分の資産投下に対するリターン(戻り)はどれぐらいの率かを知らなければならないのです。これを利回りと言います。
(この記事はエヌピー通信社「税理士新聞」より転載したものです)