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[スタッフブログ]斎藤紀明が斬る!

代筆ロボットから遺言を考える2017.03.24

「代筆ロボット」が実用化され始めています。最近のニュースとして、トヨタ系列の㈱デンソーが関連会社と共同開発した「解答代筆ロボットアーム」が「東大入試の論述式問題をAI(人工知能)が解いて、その解答を代筆ロボットアームが答案用紙に筆記して、解答の記入が終了すると『手を挙げて試験官に知らせる』というデモンストレーションを行って注目されている、というものがありました。

この解答代筆ロボットアームの特徴として、

1)漢字・かな・数字の書き分けが可能

2)解答用紙の筆記エリアのサイズに応じ文字のサイズ、字間の調整が可能

3)長時間の連続稼動が可能であり、しかも試験時間中(150分間)に800字~1,000字を一定の筆圧で連続筆記可能

などがあり、「文字を書く」という作業から人間を解放することで、人間はこれまで以上にクリエイティブな分野の仕事に専念できる環境づくりができる、とされています。

日本ではこのように今のところ学術研究的なレベルに留まっている代筆ロボットですが、じつは欧米ではすでに実用化されて商業サービスが始まっています。

なかでも有名なのが、『BOND』という、ロボットがペンで手書きの文字を書いて手紙などで送ることができるサービス。この『BOND』は、あたかも手で書いたような質感でメッセージカードを作ることができる代筆サービスで、現代版タイプライターのようなロボットに万年筆をセットすることで、入力された文字列を自動で書いてくれるというものです。そして、微妙な筆圧まで再現できることで、とてもロボットが書いたとは思えない手紙やメッセージカードが出来あがるとのこと。企業からの顧客向けダイレクトメールの作成や、結婚式・パーティの招待状など幅広い需要が見込まれています。

さらに驚くべきことは、「自分の手書き文字を登録して、その筆跡で手書きが出来ること」です。この『BOND』を利用するためには事前にカスタマー登録をするのですが、「既存の手書き文字スタイルから選ぶ」場合は無料で登録することが出来ます。それに対して、「自分の手書きの文字を登録する」場合にも、わずか199ドルの費用で登録できるのです。つまり、自分の手書き文字を日本円にしてわずか2万円ほどの金額で登録すれば、それを代筆ロボットが再現して手書きメッセージカードを作成してくれることになります。

懐かしい話題になりますが、私と同年輩以上の方々は、「太陽がいっぱい」というアラン・ドロン主演のフランス映画をご記憶かもしれません。あの映画のなかで、アラン・ドロン演じる貧しく孤独な主人公は、傲慢な大富豪の息子を殺して本人になりすまし、財産を奪おうと画策してその息子のサイン(署名)を必死に真似ようと練習していました。欧米では資産家は小切手を使うのが一般的なので、サインを真似て小切手で支払いをするためです。もしもあの時代に代筆ロボットがあったならば、2万円支払えばサインの偽造は簡単に出来た、そんなことを考えるとちょっと不思議な気分になります。

ところで、この『BOND』については、英語は文字数が少ないので代筆マシンの開発がスムースに進んだものの、ひらがな、カタカナ、漢字など文字数の多い日本語対応には時間がかかるものと思われていました。しかし、上記のデンソーのシステム以外にも各社が開発にしのぎを削っている現状を鑑みますと、日本語版『BOND』の実用化もそう遠い未来のことではなさそうです。

そうなりますと、ひと昔前であれば荒唐無稽なSF的な想像でしかなかったことが現実の問題となり得ます。すなわち、資産家のお父さんが亡くなってから、財産を独り占めしようとした放蕩息子(次男B)がこっそり亡きお父さんの日記や手紙を持ち出して、それを日本語版『BOND』にスキャナーで読み込ませます。そして亡きお父さんの筆跡を登録して「財産はすべて次男Bに相続させる」という「自筆証書遺言」を偽造します。すると・・・?

この代筆ロボットにより偽造された「自筆証書遺言」、たいへんな難問となりそうです。たとえば「筆跡鑑定士」という専門家に依頼しても、その偽造された遺言は間違いなく亡きご本人の筆跡(さらには筆圧まで完璧に再現したもの)なので、「これは本人の自筆に間違いありません」という鑑定結果になることでしょう。そうなりますと、奥様(配偶者)や長男が「父がそんな遺言を残すはずがない!」と主張しても、覆すのは至難のワザとなってしまいます。

さあたいへんです。もしかすると、欧米ではすでにそのようにこの代筆ロボットを悪用した犯罪が起こっているのかもしれませんが、やがて日本でも「本人の自筆」という書類の効力についての議論が起きるかもしれません。それは遺言にかぎらず、契約書や連帯保証人まで、どのような書類にも起こり得ることです。いやはや、なんともすごい時代を私たちは生きているようです。

東京アプレイザル物語

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