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[スタッフブログ]斎藤紀明が斬る!

『完全個室型夜行バス』が示唆するビジネスホテル業界の『いま、そこにある危機』2017.01.16

わが国初の「完全個室型」の夜行高速バスがデビューすることがネットニュースなどで話題になっています。
関東バス(東京都中野区)と両備ホールディングス(岡山市)が共同で運行する「DREAM SLEEPER(ドリームスリーパー) 東京・大阪号」で、2017年1月18日から運行される予定です。

これまで夜行高速バスと言えば「安さ」が最大のセールスポイントでしたが、ここ数年「快適性」を売り物にした長距離夜行バスが各社から登場して、業界では激しい競争が繰り広げられています。ベーシックな4列シートを3列にしてゆとりある座席配置にしたり、各座席間をカーテンで仕切ることで他の乗客の視線を遮りプライバシーを確保できるようにするなど、工夫が凝らされてきました。

しかし、今回の完全個室型バスは、床から天井まで完全に壁で仕切られており、業界初の完全な個室が確保されています。そのため座席数はわずか11席(11室)という少なさで、当然ながら価格は高めの設定となっており、東京(池袋)~大阪(なんば)の片道が2万円!という驚きの金額となっています。この価格で勝算はあるのかな?と気になるところですが、まずはその点を考察してみます。
じつは、過去に私も東京~大阪間を深夜高速バス(しかも快適型プラン)で行き来したことがありますが、はっきり申しまして私のような中高年には「苛酷な環境」です。3列シートでカーテンで仕切られるタイプだったのですが、その仕切りは「横=左右」との間を仕切るためのもので、「前後」については何も仕切りがありません。
そのため、就寝のために前席の乗客がリクライニングをフルに倒すと、「その乗客の後頭部がすぐ目の前にある」状態です。もちろん自分もフルリクライニングさせていますので、私の後頭部(光頭部ではありません)も、後席の乗客の目の前です。
この状況を想像していただくとお分かりと思いますが、乗客は「前席の背もたれと自分の背もたれの隙間にサンドイッチのように挟まれている」ので、ほとんど身動きがききません。この体勢で翌朝までずっとバスに揺られて大阪まで、というのは本当に過酷な環境です。途中の高速SAでの休憩時には、なるべく身体を伸ばそうと下車するのですが、その行き帰りも窮屈な体勢でシートから出たり入ったりすることになります。
さらには、周囲の乗客のいびき、歯ぎしり、あるいは寝れない乗客がスマホをいじっていればその眩しさが目障りで気になるなど、およそ「快適性」にはほど遠い世界なのです。
このような実体験にもとづいて考えますと、この完全個室型バスは「ぜひ乗ってみたいバス」と言えます。
全席を扉付きの完全個室として、全面カーペット敷きでスリッパやミネラルウォーター、アイマスク、耳栓、歯ブラシなどのアメニティが用意されるほか、コンセント、充電用USBに加えて車内Wi-Fi、プラズマクラスターイオン発生機なども備えられているとのことで、まさに至れり尽くせり。
そしてトイレは長距離バス初の温水洗浄機能と水浄化機能付きであるだけでなく、それとは別にパウダールームも独立して設置されて、女性のメイク直しにも完全対応しているとか。「まるでホテルに宿泊しているような感覚」が味わえるとのことです
ただし、車両保安基準の関係上、座席をフルフラットにすることが出来ないので「せっかくの完全個室でも、結局は窮屈な姿勢で寝にくいのでは?」という心配の声もありますが、これもNASAの宇宙飛行士向けテクノロジーを採用した特製シートで、「浮遊感を感じながら深く眠ることができる」そうですから、快適な睡眠が提供されるようです。おぉ、なんと素晴らしい。これはぜひ乗ってみたい!そう思わせてくれるニュースです。

さてそこで、冒頭の2万円で勝算があるのかな?という疑問です。なにぶんにも新幹線グリーン車並みの価格ですから、はたして需要がついてくるのでしょうか。私は自分自身が乗ってみたいと思っていることもあり、十分に勝算はあるものと思います。
バス会社の経営トップも、「『DREAM SLEEPER 東京・大阪号』では、移動中にホテル同様の休息時間を過ごせるだけでなく、深夜発、早朝着で移動前後の時間も有効活用できるという付加価値が価格に反映されています。ともできます。『時間を有効に使いたいからバスを選ぶ』というお客様に乗っていただきたいです」とマスコミの取材に回答して、「『安く運ぶ』から、バスに『乗ることが目的』になるバスです。」と明言しています。
さて、本稿はその点だけを取り上げて「個室バスの利用者が増えるとビジネスホテル業界の危機がやって来る」と申し上げたいのではありません。さすがに「ビジネスホテル業界がピンチになるほど」には、完全個室バスは普及しないでしょう。
そうではなく、バス業界がこのようなビジネス展開を考えているその先に、「完全自動運転」の時代がやって来ますが、その時こそビジネスホテル業界が正念場を迎えると思われるのです。なぜならば、「快適な睡眠ができる特製シート」が用意された完全自動運転車が実現すれば、それは上記の「完全個室バス」の「パーソナル版」となり、乗客はカーナビで目的地をセットするだけで(あるいはスマホで予約設定するだけで)自分で運転することなく、ぐっすり安眠したまま目的地に到達することが出来ます。
しかも、夜行バスのように集合場所・下車場所にしばられることもなく、好きな場所へ・好きな時間に自由自在に到着することが可能となりますので、たとえば出張において「前夜のうちに現地に到着してビジネスホテルに宿泊する」必然性はきわめて低くなります。むしろ、時間の有効活用という点からは前夜遅くまで別の仕事や用事を済ませて、それから出発して快適に移動して、翌朝すっきり目覚めて現地に到着するほうがはるかに効率的です。

そして、目的地も時間も自由自在なのですから、東京・大阪・名古屋・福岡といった大都市にかぎらず、むしろ地方都市への出張のときに使い勝手がよいので、「駅前徒歩2分の便利なビジネスホテル」などが影響を受けるのでは?と思われます。

これはあくまでビジネスホテルなどの「とりあえず泊まれればよい」といった宿泊施設の話であり、高級ホテルや温泉旅館などのように、宿泊すること自体が目的・楽しみであるような場合には当てはまりません。しかし、ビジネス用途に限れば、十分に考えられる近未来像ではないでしょうか。この先わずか数年で実用化する可能性のある自動運転は、どのようにビジネスのあり方、そして人々の生活を変えるのでしょうか。

 

東京アプレイザル物語

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