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[対談ブログ]こんにちは、芳賀則人です

こんにちは、芳賀則人です(第1回:株式会社タクトコンサルティング会長・本郷尚先生(前編))2015.09.01

『こんにちは、芳賀則人です』

※このページは、不動産鑑定士・芳賀則人(株式会社東京アプレイザル 代表取締役)が、税理士業界で長年にわたりご活躍しておられる先生方を訪問して、いろいろなお話を伺わせていただく対談集です。資産税や相続・事業承継対策に関するお話だけでなく、ときには会計事務所創立の頃のご苦労話や、事務所経営のこと、人生にまつわる様々なお話まで、多岐にわたるお話を先生方から伺わせていただきます。

 

記念すべき第1回は、わが国の資産税分野におけるコンサルティングおよび税務におけるトップランナーとして知られる税理士法人タクトコンサルティング会長の本郷尚先生にお話を伺いました。

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なお、この日の対談はたいへん長時間におよび話題も多岐にわたりましたので、2回に分けて掲載させていただきます。

【第1回】

芳賀:本郷先生、本日はよろしくお願いいたします。はじめにこの企画の趣旨をご説明させていただきますと、税理士業界においてトップとして活躍しておられる先生方をおたずねしまして、私がフリートーキングでお話をさせていただいて、それを東京アプレイザルのホームページ上に、対談的な形で掲載させていただこうという、そのような企画なんです。

本郷:読者層としてはどのような方々になるのでしょうか。

芳賀:もっとも接点があるのは税理士さんになります。その次が不動産業者さんという感じです。その方々を対象と考えています。

本郷:なるほど、そうなんですか。

芳賀:私どもの不動産鑑定の受注の構造を申しますますと、大体7割近くは税理士さんからなんです。あとは不動産業者さん、弁護士さん、建築業者さんなどで、その他は少ないです。

本郷:最近はどのようなものが多いんですか。

芳賀:広大地の判定に関する意見書ですね。それと、相続じゃないんですけれど、最近多いのは相続前の対策で、建物だけの評価って多いんです。建物だけを移転するというのはやたらに多いんです、実は最近。

本郷:個人所有の建物を法人に移すのですね。

芳賀:そうです。いわゆる時価評価で移すっていうのがすごく多い。

本郷:一般的に言うと今まで税理士さんというのは、簿価で移していましたよね。

芳賀:そうです。

本郷:それを、売却益を出させるようにするということですか。

芳賀:いや、売却益より、むしろ売却損です。売却益だと、どうしても譲渡税の問題がありますので、低ければ鑑定を入れたいっていうのが本音のところありますね。ただ、不思議なことに、高くてもいいよっていうのもあるんです。

本郷:私なんかから見ると、両方あるなと思っています。私から見ると、最近では「建物に価値があり」という見方も十分あるわけです。これだけ建築価格が高くなると、古くても、ちゃんとリフォームやリニューアルをすれば価値が高くなって、高く売ったっていいじゃないかと。市場ではその様な取引はありますから。

芳賀:はい、そうですよね。

本郷:今までの税理士的に見ると、簿価で移せばいいんだろうとか、個人間であれば固定資産税評価額で移そうという話があります。そうじゃなくて、本当は時価でどう見るか、それが大事だと思うわけです。

芳賀:そうですね。特に、都心部における鉄筋コンクリート系の収益物件がありますよね、テナントビルなどの。これって、やっぱり利回りが低くなっているせいもあるので、なかには路線価の2.5倍とか3倍で売れる所もあるわけです。建物自体も付加価値があって高くなっているっていうのもありますし。

本郷:そうですよね。そういうことは十分あり得ます。

芳賀:それから、やっぱり税理士さん的には、行き先は無償返還の届出なんです。土地はさすがに高いので移せないじゃないですか、譲渡益も出ちゃいますから。だから土地は動かさないんですけれど、建物だけ動かすっていうケースがものすごく多いんですよね。

本郷:そうですね、分かります。無償返還で。

芳賀:ええ。で、結局、個人だとお父さんの財産は全部、相続税の対象財産になっちゃいますから、法人にしておこうというのが非常に多いです。

本郷:そうでしょうね。

芳賀:それで伺いたいんですけれど、税理士さんが顧問先にこのような提案をするとき、報酬のもらい方っていうのはどのように考えておられるんでしょうか。

本郷:いろいろな考え方があると思うんですけれど、僕は「家賃」を基にすることもあると思っているんです。収益力です。

芳賀:ほう、家賃ですか。

本郷:はい、今、芳賀先生のところで家賃をやっているかどうか知らないんですけれど、私どもは、たとえばMBOというような、従業員に経営をまかせる方法があります。

芳賀:はい、いわゆる番頭さんに会社を任せるようなことですね。

本郷:そうです、番頭さんに会社を譲るというか。そのときに、お店を残して譲るということになるんです。

例えばお医者さんのケースです。副院長に病院経営をやらせるんです。そのときに、この病院の建物はそのまま任せるわけです。そして、病院をあなたに継がせます。すると、この病院にはいわゆる営業権があるわけです。例えば、この建物の家賃が仮に200万円するとして。

芳賀:200万円。はい。

本郷:従業員もセットで全部渡します、設備も全部渡しますと。

芳賀:それ、200万円っていうのは、じゃあ院長先生がもらうっていうことですか。

本郷:そうですね。院長の奥さんがもらうんです。

芳賀:なるほど、奥さんがオーナーですね。

本郷:それを、院長がまだご健在なうちにやるわけです。だけど、その病院には営業権、すなわちのれん代っていうのがあるわけです。だって患者さんがそのままついていくんです。

芳賀:そうですよね。

本郷:そうすると、じゃあ最初の5年間は、のれん代として月額50万を家賃にくっつけましょうと。

芳賀:ああ、なるほど。すると家賃は250万になるわけですね。

本郷:そうですね。それで、200万は定期借家ということで10年間固定させるわけです。

芳賀:なるほど。

本郷:のれん代が50万円で、そうすると年間600万円です。それを5年間ですから、合計3,000万円がのれん代です、という話になるわけです。まぁ、私から見ると実際200万円の家賃10年分が、実はこれ、その中にかなりのれん代が入っているなと思っているわけです。10年間、家賃が値下がりしていませんから。

芳賀:なるほど。

本郷:つまり、これから10年間、家賃が上がるとは思ってないでしょうから、これで固定させることが大事だなと、そう思うわけです。じつはこういう考え方でビジネスをしているところは他にもあって、不動産のオークションでも家賃がかなりポイントになっているんですよ。

芳賀:たとえばどういうものでしょうか。

本郷:「家賃でどれだけ稼がせるか」ってことが、実は建物価値を上げていくわけです。ですので、不動産オークションのなかで「家賃をオークションにかける」という話も出てくるわけです。

芳賀:あ、家賃のオークション、やっていましたね。あれ、すごかった。びっくりしました。

本郷:うちもそういうことをやるんです。だから、ここの副院長に、あなたがこれから病院を継ぐわけですよね、そこに従業員もそのまま、さらに設備も全部あなたに渡すんですよ、と言うわけです。それで、簿価であげるんだから設備を高くするわけにいかないけれど、そこにはのれん代っていうのがあるんですよって言って、それを家賃に上乗せするんです。

芳賀:なるほど。

本郷:で、実は定期借家で200万円ですが、最初の5年間は250万円です。その後は200万円になりますね。

芳賀:うんうん、なるほど。

本郷:そうすると、200万円掛けることの12で2,400万円ですね。つまり10年間で2億4,000万円です。それプラスのれん代3,000万円を合わせると2億7,000万円です。ここまでくれば、われわれは定期借家の2億7,000万円の取引をしたと言えるわけです。これで賃貸借契約をしてもらうんです。そうなれば、報酬はたとえば「家賃1カ月分」なんて話じゃないですよね。大リーグの選手の年俸契約に似ていますね。何年間の契約でいくらというやり方です。代理人は契約総額に対して報酬をもらいます。

芳賀:それは、10年っていうのは一つの単位なんですか。

本郷:そうですね。定期借家っていうのはそういうもんじゃないですか。つまり、契約中の家賃の総額がいわゆるリートとかファンドの考え方じゃないですか。だから固定させるわけでしょ。相手はこの契約で2億7,000万円の家賃を払わなきゃいけない。

芳賀:それを払わなきゃいけないですもんね。

本郷:ということは、債権、賃借権を売買したことになるわけです。

芳賀:なるほど。そういうことですか。

本郷:そうです。その奥様は、それだけの債権を持ったわけです。

芳賀:対価を得るわけですもんね。

本郷:そう、対価を得ることが確定しているわけです。

芳賀:そうですね。

本郷:相手は払う義務があるわけです。

芳賀:はい。

本郷:それは、私がPCP(注:パシフィックセンチュリープレイス=タクトコンサルティングが以前入居していたビル)に入った時に、痛感したことなんです。もう15年前ですけれど、初めて自分が定期借家で契約を結んだ時に、「ああ、億の単位の金額を払うんだ」ってことを思いました。5年間、家賃が幾らっていうことで、5年契約だったんですね。そこでものすごい負担感を感じたわけです。出られないんですから。

芳賀:出られないですよね。

本郷:ここ(注・現在の事務所所在地)だって5年契約です。もう、このビルの中は全部そうですよ。定期借家契約です。出られないんですから。

芳賀:5年間出られない。

本郷:出られないです。その代わり「また貸し」してもいいんですよ、という契約です。そこの病院なんかの場合、そうやって貸しますでしょ。そうすると、今度はいつでも売れるわけです。この家賃がついたものですから。

芳賀:なるほど。

本郷:そうなりますよね、200万円の家賃が付いた建物です。

芳賀:そういうことですね。投資家に売れるってことですね。

本郷:いつでも売れますよね。いつでも建て替えができますし、すでに家賃の利回りが確定しているわけです。古い建物なんですけれど、いつでも建て替えもできるし、いつでもテナントを出すこともできるし、もちろん再契約もできるんです、という物件なわけです。このように、守るんじゃなくて攻めるんです。資産を、価値を上げていくんです。

芳賀:なるほど。

本郷:たとえばこんな話もあるんです。あるホテルの建物オーナーが亡くなって、相当古くなったホテルだったんですけれど、場所がいいからということで相続人がオークションに掛けたんです。オークションっていうのは、家賃のオークションです。そこにA、B、Cのホテル運営業者がテナント候補としてオークションにやって来て、A社が最も高い金額で落札したんですね。そして、相続人である建物オーナーが「自分は何もできませんから」ということで、定期借家で家賃が確定したわけです。相続人が2人だったものですから、「後ですったもんだ揉めるのは嫌だから、家賃が確定したほうがいい」という話になったわけですね。

芳賀:そうですか。

本郷:だから建物っていうのは大事だし、そして家賃も大事だと思います。一応、鑑定は出したんです。今の相場はこのぐらいですよって。

芳賀:なるほど。

本郷:だけど、それはあくまでも参考価格です。ただ、報酬のもらい方は全然違います。こういう話のときに不動産業者がもらう宅建業法の金額じゃないです。コンサルティングで「建物の付加価値」を出すのですから、それに基づいて報酬をいただきます。

芳賀:そうですか。これはすごいですね。

本郷:それに、場所がいいですから小規模宅地の特例が使えるんです。一等地ですから坪数は大きくないですけれど、330平方メートルぐらい、100坪ぐらいの土地ですから。そしてすごく評判がいいから「使える土地」で、まさしく収益の塊みたいなものですから。報酬の考え方については、要するに契約自由の原則ですよね。単純に不動産物件やテナントを紹介して、はいナンボの世界じゃないですから。幾らで金額を設定して、幾らで家賃設定をするか、どういう契約をするか、それによって違っちゃうわけですから。もちろん弁護士さんも入ってもらいましたし。

芳賀:そうですか。しかし、そこら辺のノウハウっていうのはなかなか難しいですね。さて、今度はタクトさんのことを伺いたいんですが、本郷先生、こちらで何年ぐらいになるんですか。

本郷:ここで3年です、ちょうど。

芳賀:3年になりましたか。PCPが何年でしたか。

本郷:10年です。

芳賀:10年もいらっしゃったんですね。

本郷:だから、この八重洲(PCP)で東京駅の前に出て、それからこっちで3年ですね。

芳賀:やっぱり先生、この丸の内周辺というのは、選ぶ理由っていうのは「やっぱりここだ」っていうことですか。

本郷:そうですね。その通りです。

芳賀:日本の中心ということですね。

本郷:PCPが、東京駅で一番最初に大きな大型ビルとしてできたものですから。

芳賀:そうですよね。

本郷:それで、ここは運良く入れたんですけど。一番安い時に入れたんです。

芳賀:そうでしたか。定期借家というと、家賃の値上げって、特にないんですか。

本郷:はい、期間中はないわけです。その代わり確定された期間になるわけですね。それがいい経験にはなりましたけど。特にPCPは、結局ファンドに関連したビルということで、何かと話題になりましたから。

芳賀:そうですよね。ファンドも何度も変わりましたね。

本郷:ええ。その渦中に居たわけですから、直接ではなく間接的にですけれど、そういったファンドに関するいい勉強をさせてもらいました。

芳賀:そうですね。何かと話題になりますし、最先端ですもんね。

本郷:そう、最先端です。だから、いわゆる土地活用というイメージとは全く違います。要するに、ファンドを通じて国際的な競争の中に居るわけじゃないですか。

芳賀:もともと最初は香港資本でしたっけ。

本郷:そうです。そして、この土地の元の地主が、JRというか国鉄、さらにいえば国労ですよね。国労の、何というか日本の塊みたいな、「土地の塊」みたいな発想の土地だったのが、国際的な投資ファンドに変わってああいうビルになって、その中に有象無象のテナントが入ってという、マネーゲームの対象になったようなビルですよね。ちょっと話がそれちゃったけど、その国鉄がJRになって、生まれ変わったわけですね。私は、今や日本一の不動産屋さんはJRだと思っています。

芳賀:そうですね。

本郷:ところで、いきなり話が逸れてしまいますが、日本の最高路線価はどこだと思います?

芳賀:銀座じゃなくて、ですか?

本郷:また、そういうこと言って、芳賀先生らしくない。

芳賀:いやいや。

本郷:銀座の5丁目ですかね・・・?

芳賀:はい、不動産鑑定士的には「銀座」って言うしかないんですね。

本郷:僕はそう思ってないです。

芳賀:丸の内ですか?

本郷:全然違う。ノー。ノー。

芳賀:じゃあ、駅ですね。駅の中。

本郷:そうですよ、エキナカですよ。

芳賀:ああ、東京駅ですか。

本郷:そう、東京駅です。あそこにはいわゆる「土地」がないんです。むろん、リアルには土地はあるんですが、普通、不動産の「土地」といえば道路とセットになっていて、道路から人がきますね。しかし、駅の動線は違いますし、構内、地下しかないでしょう?空中権はすでに売却済みですから。

芳賀:そうですね。

本郷:全部売っちゃったんだから、JRは。もう手足もないし、首もないし、あるのはあの地下しかないんでしょ。でも世の中で一番稼いでいるのは、あそこですよ。日本一稼いでいるのはエキナカです。

芳賀:要するに建物ですよね。

本郷:建物っていうか、あの下だけです。

芳賀:地下に人が全部集まってくるんですね。

本郷:そうです。365日、24時間とは言わないけれど、朝から晩まで売りまくっています。

芳賀:そうですよね。

本郷:品川だって、上野だって、新幹線の止まる駅は全部あのエキナカで稼いでいるんです。それは銀座どころじゃないです。

芳賀:確かにそうですね。

本郷:一番効率のよい、利益率の高い商売で一番稼いでる所じゃないですか。

芳賀:確かにそうですね。

本郷:「土地」じゃない、面積でもない。「いかに稼ぐか」っていうことでしょう。

芳賀:人が集まってくるか、ですよね。

本郷:人が集まって、お金が集まってくるでしょ。

芳賀:人が居るから集まってくる。

本郷:固定賃料じゃない、売上げ変動賃料でしょう。土地の面積じゃなくて、いかに稼ぐかですよね。

芳賀:たとえば百貨店なども、中国人観光客が思いっ切り買ってくれましたから2月は良かったんですけれど、このところちょっと百貨店そのものが、落ち着いてしまいましたね。

本郷:ですから、土地活用という言葉をよく我々は使っているけれど、そんなもんじゃないですよね。あれは、僕は東京駅のすぐ目の前に居るから分かるんです。なんといっても、駅前どころでない、エキナカですね。

芳賀:エキナカですか。

本郷:うん。だって地方に行ったって稼げるのは観光地をのぞけばサービスエリアあるいは道の駅ぐらいでしょう。サービスエリアに人・物・情報が集まって、そこで稼げるだけでしょう。それ以外の土地はどうでしょうか。だから、そこにサービスがなければ、不動産の価値はないんです。

芳賀:付加価値がなければということですね。

本郷:それは何なのかっていうのを考えないといけません。土地になにか建物を建てて、はい、貸家建付地になりましたなんて、そんなことを言ってたら駄目です。何か勘違いしているんです。

芳賀:そうしますと、地主さんの土地活用そのものは、先生はどういうふうにお考えですか。今までは、とにかく建てて、建てて、建てまくって来ているわけですけれど。

本郷:それは、「地主さん、あなたの勝手でしょ」って話なんです。土地があるから建てる、っていう話ですからね。お客さんを見ていない。市場を見ていない。

芳賀:まあ、ほとんど見てないですね。

本郷:お客さんが何を望んでるか、商売の基本は顧客満足でしょう。お客さんが何を望んでるかっていうことの志向がないわけです。

芳賀:そうですね。

本郷:土地活用っていうのは、地主さんが何を望んでいるか。それを、「望んでいるのは節税でしょう」って、それで建てさせてしまいます。

芳賀:そうです。

本郷:本来のお客さんっていうのは入居者です。

芳賀:ええ。普通のサラリーマンなどですね。

本郷:そうなると、その人たちは節税なんか何も望んでいません。

芳賀:望んでないです。

本郷:法人化も望んでいないし、信託も望んでないです。

芳賀:望んでいない。

本郷:それは、あんたの勝手の話でしょ。

芳賀:そうです。

本郷:そんなことは、市場には何の関係もない話ですから。

芳賀:そのとおりですね。

本郷:だって、お客さんがあっての商売です。それなのに、お客さんが何にも望んでないことを一生懸命、考えちゃうわけです。金利が安いから建てるとか、二世帯住宅建てるとかいって。そういうことは、お客さんと何の関係もないわけですよ、お客さん本心から二世帯住宅に住みたいと思っているのかどうか・・・。

芳賀:ああ、それ、すごいです。私も二世帯住宅についてはかなり批判的でして、本当にあれを売り込むのはまずいなって思っているんです、あの二世帯住宅っていうのは。

本郷:たとえば住宅の供給が足りない昔であれば「大家さん、間借りさせてください」って下宿屋さんに入ったという、そういう大昔の時代はそういうことは成り立ったことですけれど、もう既に2割ぐらい空きが出ちゃって、家が余っている時代にお客さんの望むものは、「駅に近くて快適な住まい」となるわけです。なかでも、まず便利が第1です。

芳賀:そうですね。

本郷:住宅があり余っている時代に顧客志向のないものなんて、あり得ない話です。だから、節税になるとかっていう話は全部副次的な話で、「供給者論理」に過ぎないわけです。

芳賀:はい、そうですね。

本郷:だからそのような顧客志向の話がないことって、おかしな話だということに気が付かなきゃいけないわけでしょ。

芳賀:でも先生、申し訳ないけど、ほとんど気が付いていないですね。

本郷:それは供給者論理です。作り手発想でしょ。

芳賀:そうです。作ったら誰か入ってくれるだろうという、そういう考え方のハウスメーカーの責任は重いと思っているんですけれど。

本郷:だから、それは作る方からの発想から考えるからであって、それを作っちゃうと、将来性が全くないわけです。じゃあ将来、それが駄目になったら売ろうかと思ったら誰も買い手が居ないわけですね。つまり市場からは何の評価も受けないわけです。

芳賀:はい。そうですね。

本郷:ですから、建てた時の数字としては合っているかもしれないけれど、計算上はそれが相続税対策になる、評価が下がる、これでうまくいく、借り上げてくれます。そういうのは納得します。じゃあ、それが長期的に見て5年、10年、20年、30年たった時に、いつか市場からはそっぽを向かれるわけです。

芳賀:そうですね。

本郷:それは不動産鑑定の対象にもなりませんよね。といいますか、要するに売れる価格にはならないでしょう。

芳賀:ならないですね。

本郷:それはみんな分かっているわけです。分かってない人は専門家とはいえませんから。

芳賀:専門家といいましても、先生、どの辺のレベルのことを専門家と言うかどうか分かりませんけれど。

本郷:少なくとも投資家という専門家ですよね。最初、僕が冒頭に言った専門家って投資家です。買うのは専門家なんですから。

芳賀:そうです、そうです。

本郷:その専門家から見て、都心から1時間も離れた場所で駅から10分、15分だとか、そんなのあり得ない話でしょう。あるいは、入居者から見て、都心から1時間も離れた所ですよ、そこから5分、10分、あり得ないです。例えば30分の所と1時間の所だったら、通勤で往復すると1時間違います。1時間違うっていうことは、たとえば普通のサラリーマンが時給3,000円とすると、往復1時間だから20日で6万円になるわけです。そうすると、30分違うっていうことは1ヶ月分の時給で計算すると6万円も違うわけですから、それで家賃が出てしまいます。

芳賀:なるほど。

本郷:そんな所に住むわけがない、と考えられますよね。うちの社員で、そんな所から通っている人は誰も居ません。ですから、駅から10分以上の土地には絶対住まないわけです。入居者の4分の3は10分以内に住んでいます。

芳賀:10分以内ですね。

本郷:できれば5分以内でしょう。

芳賀:そうですね。

本郷:10分以上の土地はもう土地活用は難しいですから、そういう所には住まないわけです。投資家がそんな所を買うわけがないじゃないですか。さっき僕が冒頭に言いましたとおり、日本一の不動産はエキナカです。ここしかないわけですよ。それ以外の所にある店っていうのは、ロードサイドビジネスでしか成り立たないわけです。だから、やっぱりシャッター通りになっちゃうっていうのは、駅前だってシャッター通りになっちゃうかもしれません。

芳賀:そうですね。

本郷:よっぽどおいしい店ならともかくとして、ほとんどがエキナカなり駅ビル以外では成り立たないわけですね。それと同じことが起きるわけです。それは市場を見てないからです。別に税金のために何かやっているわけじゃないんだっていうことです。投資家は税金なんて言いません。節税なんて言葉、出てこないですよ。

芳賀:確かに素晴らしいですお話です。投資家は節税を考えるんじゃないって、本当にそのとおりですね。

本郷:だって元本が下落しちゃったら、投資する人は大赤字ですから。それ、失敗って言うんでしょう。

芳賀:でも、ほとんどの郊外地主さんって言われる人たちは、少なくとも30年ぐらいですか、バブルが崩壊して25年はたってますけど、それ以降でも相変わらず、いわゆるアパートを作り続けてますよね。

本郷:それは守ろうとするからでしょう。土地を守ろうとか、あるいはどうするのが適切なのかが分からないからやってしまう。企業はそれ、やらないです。

芳賀:むしろ逆に売ってきますよね。大会社はみんな社宅、売りましたよね、工場用地も。

本郷:電車に乗れば分かりますよね。川崎だとか、横浜だとか、千葉でも、どこでもいいんですけど、あるいは東京だって周辺は全部売りました。

芳賀:売りました。

本郷:あるいはJRが売ったのも同じことです。全部売ったんです。JRだって今言ったように、東京駅の駅前も、丸の内だって、八重洲だって、全部売ったんです。大赤字だったからですが。それで一番いい所にお金を集中したわけですよ。それが、いわゆる企業の考え方なんです。

芳賀:なるほど。

本郷:そういう収益のある所にしか企業はお金を突っ込まないわけです。川崎の駅前だって、全部売ったわけです。武蔵小杉だって。今、武蔵小杉は開発で大騒ぎになっていますけれど、あれは日本電気の土地だったかな。

芳賀:NECですか。

本郷:そうですよね。それと、川崎は明治製菓とか。

芳賀:東芝もありました。

本郷:東芝ですよね。全部売ったんです。儲ける所にしか行かないわけです。企業の論理としては当然ですよね。

芳賀:なるほど、分かりやすいですね。

本郷:でも、それは地主さんの発想ではないというなら、それはどうぞ勝手にやってくださいと。ただ、地獄に落ちますねと。でもそれは、不動産は長期に渡るから、市場の原理に反しますね。それは後生大事に守っていくっていうならそれでいいけども。ただ、市場が答えを出しますからね。つまり市場っていうのは、お客さんがそれを欲しがるかどうかで決まります。でも、少なくとも専門家と称される税理士さんや、鑑定士さんや、建築不動産会社の人はプロなんだから、それを知らずしてやるっていうのはおかしな話です。

芳賀:そうですね。いや、でも先生、税理士さんの悪口言っちゃいますけど、ここは、やっぱりほとんど分かってない人が多いですよ。先生はちょっとレベルが違い過ぎますからね、普通の税理士さん、例えば相続の仕事をやっている人でも、先生のような話をする人はほとんど私は聞いたことがないです。

本郷:それは逆に、税制が土地に対して甘いからです。賃貸建物を建てたら税金が安くなるとか、建物に対して評価が低いからという、ここに甘い誘惑っていうのがある。それがあるから、それを誘っちゃうわけです。

芳賀:そうですね。

本郷:それは確かに、土地の評価が低いとか、それから建物の固定資産税評価額が低いとか、貸家建付地になるとか、その数字はそのとおりなんです。その瞬間的な、部分的なっていうか、短期的な対策としては合っているんです。だから、そういった魔法の杖みたいな話に乗っちゃうんだけれど、それは不動産全般について全部言えるわけです。そうするとマンションだって全部そうですし、不動産と称されるものはみんなそうなわけです。そうなると、現金よりも不動産がいい、借入金がいいってことになってしまう。だけど、そういった方法は古き良き時代、つまりたくさん供給しても大丈夫な時代の話です。こうやって供給過剰になって人口が減っていくっていう、このトレンドの中では、そんなものは通じないわけです。

芳賀:それが現実ですよね。そうしますと、例えば地主さんといっても65歳とか70歳ぐらいの人も相当増えてきているわけです。お父さんが90歳とか。

本郷:あるいは、それを継いだ人ですね。

芳賀:2代目が50代から60代って、やっぱりすごく多いわけです。

本郷:はい、団塊の世代の人たちですね。

芳賀:そうです。そうすると、その人たちに、私もいろいろなところに書いているんですけれど、このままで行ったら、郊外地主は絶滅危惧種になっちゃうよ、みたいなことを言っているんです。だいぶ前に書いたんですけれど。つまり30年後を考えたら、とてもじゃないけど今の地主さんが同じような境遇で居られるはずがないって、私は思っているんです。

本郷:そうですね。そのとおりです。

芳賀:ですから、都心に所在する、たとえば30分の地主はいいんですけれど、1時間の地主ってやたらに多いわけですよね。

本郷:圧倒的に多いですね。

芳賀:圧倒的に多いですよね。この人たちに対して、やはり先生は前から言われていますけれど、買い換えとか、組み換えとかをやりなさいと言っているけれど、いつも私が本郷先生から聞いている話がありますよね。つまり、「いや~、そう言っても芳賀さん、じっさいに動くのは100人のうち1人か2人しか居ないんだよ」って。

本郷:そうですよ。

芳賀:やっぱり、それは変わらない。

本郷:成功者っていうか、そのことに気が付く人はごく一部の人です。やはり現状維持という人が多いんです。それはしょうがないです。

芳賀:しょうがないですよね。

本郷:現状維持で、だからそうなるともう、座して死を待つしかないですよね。それは茹でガエルみたいなものでしょうね。だんだん、だんだん、ヘナヘナってなって。

芳賀:気が付かないわけですね。

本郷:気が付かないうちにそうなっちゃいますね。ただ、唯一救いがあるとすれば、古いアパート作っちゃってヒーヒー言っているけれど、今ここへ来て金利が安いから、1パーセントぐらいでも銀行が融資を出すじゃないですか。そうすると、また何を間違えたか、その1パーセントの金利が安いところで、物件の利回りが5~6パーセントで回っているじゃないですか、あるいは7パーセントとかで。古くても、そこそこの利回りがとれる。だから売れるチャンスなんですよ。間違って買っちゃう人が居るじゃないですか。

芳賀:あー、居ます、居ます。

本郷:そういう時は売っちゃえばいいんです。

芳賀:なるほど。

本郷:現金化して、それを他の不動産に回すか、あるいは現金化するか、年金化するんです。そのお金でもって、自分で食いつないでいけばいいじゃないですか。

芳賀:なるほど。

本郷:家賃年間700万円取れていれば、利回り7%で売れれば1億円で売っちゃうとか。

芳賀:なるほど。

本郷:まあ、それなりの現金にはなるでしょうから、60、70だったら、このあと食いつなぐ位は何とかなりますけど、これから先、20年、30年たったら、相当へなっちゃうじゃないですか。

芳賀:ですね。

本郷:だったら売却してお金にしちゃった方が、よっぽどいいですねと。子どもだって、そんな郊外のものを受け取ったって、修繕費は掛かるし、家賃が下がるしですから、この先も見込みがないっていうのは分かってますからね。だったらお金の方がよっぽどいいですねと。そういうふうに考えるのが、経済の分かっている人の普通の話じゃないかなと僕は思いますけど。それは現金に変えたら相続税がかかるっていう人がいるけれど、かかったっていいじゃないですか。全部持っていくわけじゃないんだから。

芳賀:そうなんですね。だけどそういうふうに税理士さんはなかなか言わないですよね。現金になっちゃったらもったいないよね、みたいな感じで。

本郷:みんな使っちゃえばいいじゃないですか。

芳賀:そうですか(笑)。

本郷:使っちゃえばいいじゃないですか。お金は使うためにあるんですから。守ろうとするから、そういうふうになっちゃうと思うんです。でも自分を守ろうと思えば、現金のほうがいいですし。唯一、残すなら都心のワンルームみたいなほうがいいでしょうね。

芳賀:都心部であれば。

本郷:都心部の方が、さっき言ったようにお客さんのニーズは満たしているし、将来、現金化することもできるわけだからいいと思うんですけど。だから、節税が先に来るからですよ。現金を持ってたら大変だからって、何かにしちゃう。土地があるから大変だから、何かやる。節税が目的化しちゃうじゃないですか。じゃなくて、その人の人生が幸せになるかどうかとか、そっちが目的になってないですよね。土地のために、親のためとか、会社のためとかってなっちゃって、事業承継だとか、財産承継だとか、こういうタイトルになっていて、そのために何をしましょうかってなってるけれど、「あなたの人生が幸せになる」っていう、それがないじゃないですか。

芳賀:いいお話をありがとうございました。

(ここまでが1回目(前編)です。後編は第2回にお届けします)

東京アプレイザル物語

斎藤紀明が斬る

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